にささんの映画レビュー・感想・評価

にさ

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関心領域(2023年製作の映画)

3.8

クサいものにはフタをせよ


人は見たいものだけを見ることができる。この映画に、目を避けたくなるような残酷なシーンは存在しない。ただ、耳を塞ぎたくなるような悲鳴が聞こえる。

アウシュビッツ収容所の所
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ミッシング(2024年製作の映画)

3.7

ターニングポイント


子どもの頃に憧れていた俳優たちが節目を迎え、新境地へと旅立っていく。

石原さとみの演技には、とある特徴がある。たまに吃りながら、早口で捲し立てるような演技。演技力というよりは
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悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.3

馬鹿にしやがって


冒頭数分、白樺の森を地上から映す構図からこの映画は始まる。それが数十秒だったのか、それ以上だったのかは覚えていないが、率直に贅沢な映画だなと思った。

私は、幼い頃は田舎に、今は
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名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)(2024年製作の映画)

3.7

もはや国家プロジェクト


なんだかんだここ数年は欠かさず新作を見ているような気がする。
最近は結構地味目な印象だが、ド派手でツッコミどころばっかみたいなコナンはあまり好きではないので、今回もそこそこ
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正義の行方(2024年製作の映画)

3.6

疑わしきは罰せず


このドキュメンタリーは、大きく二つの立場から映される。有罪を信じるもの、無罪を枯渇するもの。
おそらく、あえてそう映していると思うが、有罪とした警察側はそれを武勇伝のように語る。
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すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

3.3

死に迫る再来


すずめは死など畏れぬ女神のように描かれるが、それは幼さゆえの強がりと驕りであったことが後からわかる。3.11を経験した者は、死という存在と極めて近いところで生活を送っただろう。4歳と
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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

4.3

思い出に縋りながら


人は思い出によって強くなる。それは挫折であり、栄光であり、孤立であるが、いつだってあなたを支えようとするだろう。
私たちは木を登るように成熟の期間を果たす。足を置く枝によって、
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海がきこえる(1993年製作の映画)

2.8

モラトリアムで無駄話でも


理解しようとすれば惹かれてしまうのであえて突き放す。自分が先を行っていたはずなのに、心を許したあいつに追いつかれ、追い越される。従順な足掻きが黒く染まることもあれば、青く
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

5.0

永い言いわけ


『原爆の父』と言われたオッペンハイマーの生涯を描いた今作は、その題材から日本での上映が延期され、配給会社を交代することで上映が実現した。

ノーランがオッペンハイマーを題材に映画を作
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HANA-BI(1997年製作の映画)

3.8

愛してるなんて野暮な言葉


ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した本作は疎に皆が皆、死場所を探している。
西が妻に送る視線は常に隠されているが、いつだって優しい目をしていたに違いない。この作品の前
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Kids Return キッズ・リターン(1996年製作の映画)

3.8

我慢だ、黄昏。


二人の青年を軸に青春という最大値からの解脱を描く。彼らはそれぞれの栄光と挫折を手にするのだった。

北野映画の六作目となった本作は、北野武と久石譲が初めて手を組んだ作品でもある。
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劇場版 名探偵ホームズ デジタルリマスター版(1984年製作の映画)

3.8

自分の親世代の人たちが客席を埋めていて、この人たちの子ども時代にこの作品があったんだろうなと思うと、どことなく幸せな気持ちになった。

12人の優しい日本人(1991年製作の映画)

3.5

意固地な矜持


脚本を手掛けた三谷幸喜は『十二人の怒れる男』を自分のベスト映画に挙げており、そのオマージュとして今作を制作した。もし、日本に陪審員制度があったなら。

オマージュもとへのリスペクトも
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十二人の怒れる男(1957年製作の映画)

5.0

その人を知りたいと思うなら、その人が何に怒るのかを知りなさい。


シドニー・ルメットが初めてメガホンを取った当作は密室劇の金字塔であり、最も有名な法廷劇である。
殆どの場面は、一つの部屋で行われ、撮
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.1

救命ボートの上で大声で歌うということ


SFの金字塔と呼ばれるほど絶対的な影響力を持つ、フランク・ハーバードの『デューン砂の惑星』を世界で最も偉大な映画監督の一人であるドゥニ・ヴィルヌーヴが通算5度
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この世界の片隅に(2016年製作の映画)

4.7

すずという人物は戦争を嫌悪するわけでも傾倒するわけでもない。ただ、あの時代に生まれ、生きた人だ。生きようとしたわけではなく、ただただ生きた人。
戦争に負けたのだとラジオが語る。すずの隣にいた女性たちは
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ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)

3.3

とある男の殺人現場を少年少女が目撃する。証拠を持つ少年少女は男に取り引きを持ちかける。
男、そして少年少女の行末を目撃せよ。


結末が序盤で予想できたので、サスペンスの旨みを味わうことができなかった
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市子(2023年製作の映画)

2.3

あらすじ省略


狙ってなのか意図せずなのか、市子と北の演技の温度差がありすぎて別々の映画を見ているみたいだった。市子はおそらく情弱でアスペルガー症の兆候があり、ある意味サイコパスのように見える。それ
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ムーンライト(2016年製作の映画)

3.8

燃えさかる情熱を、深く青い湖に沈めるような。


内気な少年であるシャロンはその性格からいじめのターゲットにされる。家に帰れば、麻薬常習者である母親に怒鳴られる日々に、売人であるフアンと唯一の友である
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ロボコップ(1987年製作の映画)

3.5

Gun, Gun, Gun!!!


時代とB級ゆえのチープさはあるが、子ども心を存分にくすぐる映画。久しぶりに見たけど、相変わらずワクワクしました。もうすぐ甥っ子が生まれるので、いつか一緒に見たいと
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少年は残酷な弓を射る(2011年製作の映画)

3.8

燃えるほどの熱く、赤く。


主人公のエバは望まぬ妊娠で男の子を授かることになる。しかし、その男の子はどこかおかしく、本能的な愛を双方が拒絶する。
そんな親子が歩む行末とは。

コンスタンティンで堕天
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アメリカン・サイコ(2000年製作の映画)

4.2

Shall We Dance?


80年代のアメリカンバブルにて、金融の街であるウォール街を生きるパトリック。ブランドスーツ、リムジン、高級マンションを両手いっぱいに抱える傍ら、毎晩のように人を殺す
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タクシードライバー(1976年製作の映画)

3.9

27clubに憧れたカッコーは


ベトナム戦争から帰還したトラヴィスは眠れない夜をタクシードライバーとして過ごすことを決める。

70年代のアメリカを色濃く映し、世間から溢れてしまった男が何者かにな
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殺人の追憶(2003年製作の映画)

3.8

似て非なるものなり


1986年に韓国で実際に起こった連続殺人事件をもとに描かれる。
韓国のとある田舎で連続して起こる悲しい惨状。2人の刑事は確信と確証を擦り合わせながら、犯人に迫る。

韓国警察の
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パレード(2024年製作の映画)

2.5

星の砂にミルクを


ここは生と死の狭間にある世界。やり残したことを探しながら、もう一度自分の人生に向き合う必要がある。全てをやり切った時、銀河を泳ぐのだとか。

やりたいことがありすぎて収集がついて
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メッセージ(2016年製作の映画)

4.5

未来からの言伝


異星から世界各地に舞い降りた12隻の船。彼らは我々に何も求め、何を伝えにやってきたのか。巨匠ドゥニヴィルヌーヴが描く、限りなく起こりうるかもしれない空想世界。

この映画を見る上で
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沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)

4.0

蓮の花が咲くところ


教科書で学んだ数行を160分近くを費やし悲惨な惨状を目撃する。
タイトル通り、この映画に音楽はほとんど存在しない。あるのは波の音、虫の声、弾圧される切支丹の叫びだ。

この映画
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レッド・ドラゴン(2002年製作の映画)

3.3

奥さんの次元並みの射撃力。脳天直撃。
羊たちの沈黙の下位互換。

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)

5.0

Start of Counseling.


アンソニーホプキンスが演じるレクター博士はサイコサスペンスのカリスマとも言えるべき存在で、クラリスを演じたジョディフォスターは撮影中、彼の演技があまりにも
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メメント(2000年製作の映画)

4.0

メモリアルタトゥーは逆さに泳ぐ。


前向性健忘症を患う主人公は妻の仇を討つため、最も重要な情報をタトゥーとして残す。
復讐の結末から映されることで、我々は主人公が知り得ないクライマックスに徐々に遭遇
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最後まで行く(2023年製作の映画)

3.2

サラマンダー


ドラゴンになり損ねた男たちの物語。

あの着信音がよく似合うバイオレンスコメディ。あの爆発で死なないのは流石に笑った。
実力派が好きに暴れてくれるので、模範回答のようなアクションを見
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セブン(1995年製作の映画)

5.0

諦念の美学


クライムサスペンスでありながら、この映画の旨みは犯人を追い詰めることではなく、対極を目指すふたりの刑事の関係値にある。

ミルズはこの世界に希望を見出し、自分が悪を整地することで自分自
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ヒメアノ〜ル(2016年製作の映画)

3.5

いい包丁


サイコスリラーを扱う邦画の中ではかなり好きな部類で、森田剛の演技は圧巻。中身はキラキラアイドルだってわかってるはずなのに、人を殺そうとする所業がガチすぎて、途中から本当にただのやばい人に
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シックス・センス(1999年製作の映画)

5.0

生まれ変わるたび、この映画を見に戻ろう。


この映画にはとある秘密がある。知らずに見るべきなので、ここではそれに触れないことを約束する。

私が伝えたいのはコールと母の関係性だ。
子どもにしか見えな
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.6

アカデミー主演ワンコ賞


我々は裁判官として参加する。強制ではないから、聴衆として時間を過ごすこともできるが、ごく少数になるだろう。

この事故あるいは事件を決定付けるには証拠が足りず、双方の感情の
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