都部

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかの都部のレビュー・感想・評価

2.6
放送当時は両の乳房を強調する青い紐をアクセントとしたそのビジュアルからメインヒロインであるヘスティアの人気が白熱していたが、そうした前評判を抜きとすると良くも悪くも癖のない作品であるように思う。

構成に淀みを感じるほど作品設計は粗雑ではないものの、非転生型の異世界ファンタジーの王道をなぞり続ける本編は個人的には味気なく、原作4.5巻までの範囲を13話のアニメとして起こした割には物語は単調な印象で、作品を牽引するクリフハンガーじみた布石や今後に繋がるキャラクターの展望が不明瞭なため作品全体の魅力を大きく欠いている。

まずベルの目的としてあるアイズ・ヴァレンシュタインに並ぶ強さというのもアニメにおいて不明確で、その実力の差はたしかに動きとしては明示されるものの、彼女の何処が優れているのか──スキルなどは語られるがそれの何が凄いのかの説明などがない──が視聴者からすると分かりかねるので、ベルがそこまで努力するだけのアイズ当人の魅力はさして伝わらず、またそんな魅力的でない目的に邁進する主人公の姿も同様に空回り続ける。

作中でベルのステータスの急激な変化が物語に変調を齎していくが、基本的に苦戦を強いられる立場にあるのでフレーバーテキスト程度の物としてしかそれらを認識出来ず、レベルアップによる以前以後の差異から来るカタルシスもないために結果として展開が辛勝の一本調子に陥っているのもよくないと思われる。
またベルの善良なキャラクター性も個性としてプレーンの域を出ることなく、命の危機に晒されるダンジョンが存在する世界においてどうしてその善性を貫けるのかというバックボーンも弱い。
ヘスティアとの出逢いも劇的と言えるようなものではなく、その立ち振る舞いに不快感はないものの、特別好感を覚えるほどの個性もないので類型的な直向きさだけが取り柄の主人公として話の上で最低限の役割をこなすばかりで面白味がなかった。

彼の善性に惹かれるヒロイン達の色恋以下の感情の機微も不足しており、あくまでも表面的な属性が持つ可愛さに依存したヒロインの描写も物足りない上に、先述したアイズにも同じことが言えるのでキャラクターの交流が齎す掛け合いが微塵も面白くないのが個人的に最もキツかった。短期的な目線で見れば爛漫なヒロインであるヘスティアには可愛らしさがあるが、他のヒロインが絡む場において嫉妬以外の感情をさして見せないなどの姿を見ていると、キャラクターとしての底が浅いという印象を抱いてしまうのは致し方ないだろう。

世界観は最低限に、しかしながらキャラクターはあまり面白くないので個人的に高評価はし難いアニメシリーズである。
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