【2017年秋アニメ作品{全12話}】
「さくら荘のペットな彼女」や「青ブタ」シリーズの鴨志田一がシリーズ構成を務めたオリジナルアニメ。
前述した二作があまり好みじゃなかったので、個人的にこの人の作品とは相性が悪いと思っていた。
高校3年の冬という時期を舞台に描かれる青春群像劇。
受験、将来、秘めた恋心…
不確かで未知数、なあなあで進んでいた時間が一つのきっかけで速度を上げていく。
終始静かで湿っぽい雰囲気だが、随所に熱いものを感じる。
何かが突出して優れている訳じゃないが、この何とも言えぬ空気感が非常に上手く演出されてる作品という印象。
まず、アニメとしてはかなり地味な作品。
華や派手さのようなものは一切無い。
奇抜でインパクトのある様な、所謂アニメ的な設定もキャラクターも基本的には存在しない。
その点、さくら荘や青ブタとは作風が全く異なる。
同時に、キャラや設定に依存せず、あくまで写実的な描写のみで勝負する姿勢には痺れるものがある。
この手の青春ものとして、高3の冬休みから物語がスタートするっていう、ピンポイント且つかなり特殊な舞台設定。
普通なら物語が終わりかける所から始まる物語であり、劇中僅か3ヶ月って期間も1クールのアニメとしては丁度いい塩梅ではある。
登場人物もストーリーも絶妙にじれったくて面倒くさい。
湿っぽさや爽やかさが渾然一体となった雰囲気。
主人公の言動や性格とか、三角関係の構図とかは、何処となく俺ガイルっぽい。
イメージとしては、ヒロインがガハマさんといろはすで、ヒッキーを取り合ってるみたいな。w
物語の舞台は神奈川県の湘南エリア。
主人公たちの通う高校のモデルは深沢高校という実在する学校。
劇中には湘南モノレールも描かれている。
これらの背景の描写はかなり丁寧で拘りを感じた。
ただ、その分キャラの作画が正直イマイチで残念だった。
特に走るシーンや野球のシーン等の動きの描写は所々ちょっとキツかった印象がある。
手抜きって訳じゃないんだろうが、若干雑さが目立つ。
音楽プロデュースはやなぎなぎさんが担当されてるってことなので、個人的には取り敢えず最高です。
ヒロイン3人が歌うED曲も劇中の切ない雰囲気とリンクしてて、詞も曲調も素晴らしい。
もうこの物語を懐かしいと感じてしまうくらいに自分は年をとってしまったんだなぁ…と、少し感傷的な気分にもなる。。
まあ正直、ストーリーに特に驚くようなギミックも無いし、俯瞰的に見て、これだけ作品が乱立する時代でそれらを押し退けて輝ける程の魅力は特に感じない。
キャラ的に小宮が一番魅力的に見えた、というか彼女は色んな意味で本作のセーフティネットとバランサーの役割を担っていたと思う。
なにせ全体的には登場人物が皆んなパッとしない。
もし彼女の存在が無かったらもっと陰鬱な空気の作品になっていただろうな。
第一話のサブタイ「On your marks!」
そして最終話の「Get set, go!」
ここから思うに本作が表現したかったものは、位置に着いてからのリスタート・走り出すまでの刹那的な部分を切り取ったスライスオブライフ。
人生における瞬間には常に抽象的な味わい深さがある。
詰まる所、きっとそこを感じ取れた一部にハマるような作品なんだろうな。
いや、個人的にはかなり雰囲気に浸れた。
アニメとしてはかなりシブいラインだが、良い作品だったと思う。
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[主題歌]
OP
やなぎなぎ「over and over」
ED
夏目美緒(礒部花凜)、森川葉月(芳野由奈)、小宮恵那(Lynn)「behind」
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