このレビューはネタバレを含みます
一台のバイクが工場へ入っていく。搭乗者はフランシュシュ3号こと水野愛。彼女は工場へ入ると、タイムカードを押す。工場の同僚らしき人と談笑し、屋上へ。どうやら朝礼らしい。朝礼では社歌を歌うらしく、水野愛がそのリーダーに。カセットテープの電源を押すと流れる「イカの魂無駄にはしない〜小島食品工場社歌〜」、そして「ゾンビランドサガリベンジ」のロゴ。3年の時を経て公開された「ゾンビランドサガ」の続編、そのオープニングがこれだ。(ちなみに小島食品工場は実在する佐賀の企業だが、社歌はアニメ用に作られたオリジナル)。いかにも社歌といった感じのシンプルな伴奏とメロディ、それと対照的な、やけに綺麗な水野愛の歌声をBGMに、フランシュシュのメンバーたちがバイトに勤しむ様子が映される。一期で主人公がトラックに轢かれるオープニングを公開し、視聴者の度肝を抜いた本作だが、それに負けず劣らずのエキセントリックなオープニングだ。「アイドル辞めたの?」と思いきや、どうやらライブに失敗し、莫大な借金を溜め込んでしまったために働いているらしい。プロデューサーである巽幸太郎がそのことに絶望して酒浸りになっているという、これまた衝撃的な展開。タイトルの「リベンジ」は、この失敗への「復讐」という意味合いが含まれており、これは本作のテーマとなっている。
全体的な雰囲気や内容は、一期とそれほど変わらない。アイドル活動をゾンビであることがバレないようにこなしていく。基本的にコミカルだが、時々シリアスになったり。「細えことはいいんだよ!」みたいな感じで結構無茶な展開が多く、話のテンポが早い。その作風が良い方向に作用している所もあれば、違和感が先行してしまう場面もちらほら。例えば7話では、ゾンビだけのユニットであるはずのフランシュシュに楪舞々がフランシュシュ七号として加入。だがその1話のうちに脱退という超スピード展開を見せる。舞々には葛藤があったようだが、そうしたものが丁寧に描かれているとは言い難いように思われる。
11話にて、佐賀は大洪水に襲われる(実際2021年に佐賀は未曾有の豪雨があったらしい)。フランシュシュは避難所にて小規模ながらライブを行い、子供たちをはじめとする人々を元気づけていた。彼女たちは直近で大きなライブを控えており、災害で開催が困難なところを「佐賀のために」と強行開催する。あらゆる場所に災害の爪痕が残り、ライブ会場まで赴くのも大変なはずなのだが、会場は満員御礼。そう、彼女たちは「復興のシンボル」となったのだ。「リベンジ」、完了。
で、この終わり方だが、自分自身はどうにも乗り切れなかった。というのも、「復興のシンボル」に多くの人が熱狂してる様子が、どうにも気持ち悪くて好きになれないというのがある。3.11の時に「奇跡の一本松」なるものが持て囃されていたのに、妙な薄ら寒さを感じてしまうのと同じ感じだろうか…。ただ、確かに熱い展開ではあるとは思う。
一期で伏線らしきものを張っていたが、本作ではそれが回収されるどころか更なる謎を残して終わっている。この辺も、感動しきれない要素の一つか。特に巽幸太郎が人知れず吐血するシーンと、ラストの意味不明な大爆発は衝撃的で、明らかに続編を匂わせている。映画化決定が告知されているが、それから3年経った2024年現在、それ以上の続報はない。