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少女終末旅行のGTのレビュー・感想・評価

少女終末旅行(2017年製作のアニメ)
5.0
 同名の漫画が原作。文明が滅びた世界をチトとユーリなる二人の少女が旅をする、いわゆるロードムービー。
 文明が滅びているという事で、非常に殺伐とした世界観なのだが、本作はその過程を明らかにしたり、またそのために主人公が危険な目にあったりといったような、いわゆる物語の「常道」からは少し外れている。主人公のチトとユーリは丸っこい感じのデフォルメされたような見た目をしており、「萌え」とも何か違う、癒し系の見た目。その旅路は確かに平坦なものではないが、二人の間に深刻な亀裂が入ることはなく、またその障害も、基本的に二人協力して何とか乗り越えていく。可愛らしい絵柄でハードな内容というアニメは結構多いが(「魔法少女まどか⭐︎マギカ」や「メイド・イン・アビス」など)、本作は完全に緩いとは言えないまでも、それほどストレスなく楽しむことができる。
 一般的なアニメにある「ハラハラドキドキ」はあまり存在しない、つまり雰囲気を楽しむという向きが強い作品。もちろん本作の世界観は素晴らしく、荒廃した都市の外観は廃墟フェチにはたまらないものだし、我々が住む世界とは違う世界なのか、それとももっと遠い未来を想定してるのかは不明だが、二人が冒険する異世界感溢れる壮大な世界は男心を嫌でもくすぐってくれる感じだ。だが個人的に思う本作最大の魅力は、チトとユーリのウィットに富んだ掛け合いにあると思う。原作者のつくみず氏は読書家らしく、こと村上春樹を好んでいらっしゃるいうことで、そうした文学から吸収したエッセンスが全編に染み込んでいる感じ。時に滑稽で、時に可愛らしく、そして時に哲学的な彼女たちの台詞は、是非とも自分で見て欲しいのであまりここでは言及しないけど、個人的に「絶望と仲良く」という台詞が一番グッときた。絶望的な状況を生きる彼女たちにぴったりの、前向きだがほんの少しのペーソスが混じった名文句だと思う。
 まだまだ語りたいことがいっぱいあるのだが、文字にするのが難しいのでここまでにしておく。知名度はそれほど高くないような気がするアニメだが、本当に素晴らしいアニメなので、是非とも見て欲しい。
 
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