友達とは何か、それはこの物語が教えてくれる。
13話に凝縮されたストーリー。テンポが良くて爽快。
多分、もっと描こうと思えば描けたし、20数話くらいなら余裕で稼げたはず。普通なら南極へ行くための訓練で数話使うところを、一瞬で終わらせてしまったから驚いた。同時にこれは、カットする覚悟が決まっている作品なのだと、改めて捉え直した。描く内容を選別したから、全シーンに並々ならぬこだわりが詰まっている。
限られた話数の中で、特に比重を置かれたのは人物の心情描写だった。「南極」という掘り下げ甲斐のあるコンテンツよりもキャラクターを「生かす」ことを優先したことにより、たった13話の中で登場人物皆が輝いていた。登場人物の悩みや葛藤と対峙し、それと向き合うストーリーは青春アニメの王道だけど、本作ではその掘り下げ方が絶妙。色々なタイプの悩みを抱える4人が苦難を乗り越え結束していく様子が、完璧な配分で描かれていく。同時に、友人関係における色々な問題が観客に投げかけられる。遠くに離れていく友達の姿に喜べない人、仕事のせいで友達ができない人、活躍し出した途端に手のひらを返す人、無謀なことに挑戦する人を安全圏から馬鹿にする人、自分が楽になるために謝る人。色々なタイプの問題が提示されたから、全ての人に必ず響くものがある。特にシラセが日向を庇い、声を荒げるシーンは最高だった。本作は南極への冒険譚であると同時に、いやそれ以上に素晴らしい友情物語なのである。
シラセが南極に行く目的であった、「母親に逢いに行く」こともしっかりと達成される。それはシラセが亡き母親に送り続けていたメールが、南極で見つけたパソコンに届くシーン。言及されなかったが、パスワードはきっと、母親の誕生日を入力した後、自分の誕生日を入力し解除されたのだろう。一瞬の描写から母親の愛が溢れ出す。そして凍っていた時間が溶けだすように、大量のメールが届く。母親がまだ生きているとどこか信じていたシラセに現実を突きつけるようにも、もしくはシラセがこのパソコンを開いてくれる日をずっと待ち続けており、擬似的に母親と再会したようにも思えた。きっと色々な感情が湧き上がってきたのだろう。言葉では言い表せない感情が描き出されていた。
そして物語のディティールが素晴らしい。もちろん、南極という多くの人にとって未知のものを描くから、その世界観の描写は徹底していた。しかしそれ以上に、館林の「南極以前」の物語内のディティールが素晴らしかった。たとえば、100万円を拾ったシーンで、背後に貼られた100万円獲得のポスターとか、Suica?の残高が、定期を使っているであろう高校生のキマリは数百円、そうでない日向は4000円、という描写とか。ただでさえ話数が限られているというのに、こういう部分をわざわざ見せてくるあたり、制作の本作への愛が感じられて良い。こういうシーンがあるから、本作をより愛すことができるのだと思う。一見して不要なシーンが敢えて組み込まれることで、より作品が豊かになっている。
そしてラスト。4人が南極を発つシーン。それまで高校生4人の青春を追っていたが、ここでは4人の乗るヘリコプターではなく南極に残る人たちにフォーカスが当てられる。これにより、これから先続いていく長い長い物語が示唆される。このワンシーンで、少女4人の冒険譚であった物語世界が、どこまでも延長され、遠大なストーリーへと昇華される。
いやぁ、最高。3クールくらい観たような、圧倒的な満足感。ゆるいアニメも好きだけど、こういう、完璧にキメにきてる作品には惚れ惚れする。今日は、好きなアニメランキングが更新された記念すべき日になりました。