たつや

マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 Final SEASON-浅き夢の暁-のたつやのレビュー・感想・評価

3.7
シーズン2の神クオリティから一転、最後の着地で雑になるマギレコくんの悪癖がここでも出て来てしまった…。

いや、3話までは本当に良かったんだ。環いろはの「正しさ」を真正面から見せつけられることで「自分はこのようにはなれない」ということを自覚してしまい、絶望して最期を迎える黒江の姿はこれぞマギカシリーズという趣きがあったし、アプリ版が描くことから逃げ続けている「いろはの正しさが人を殺す」シーンとしては本当に満点だった。

問題はその後、ういを救うことが出来ず、黒江の魔女を殺した後のいろはが再び立ち上がり絶望に負けない精神状態になるまでの感情のロジックがまるで説得力を持って組み立てられていないところだ。

いろははアリナ・イブとワルプルギスを倒す前に「魔法少女になれて本当に良かった」という台詞を言うが、この台詞を言うに至るまでの感情描写が足りていなさ過ぎる。大体その台詞はマギカシリーズ全体に通底する「魔法少女になんてならなければよかった」(すずねマギカの成見亜里紗さん談)という価値観の対になる、恐らくマギレコの物語としても非常に重要な台詞・考え方の筈だ。マギアレコードという物語は恐らくこの台詞のためにあるのではないかというくらいの台詞だと思うのだが、そこに至るロジックを作り手の誰一人として考えつかなかったというのが辛い。

結局いろははうい・灯花・ねむ・黒江を救うことが出来なかった。この1点を持ってアニレコはバッドエンドだと評する向きが多いのには驚いた。おいおい、これがバッドエンドになるならまどマギ本編はもちろんFate/stay night全ルートもアメスパ2やらエンドゲームやらノーウェイホームやらもみんなバッドエンドということになるんだが?

いろはは確かに救いたい人を救えなかった。だが最後には自分が魔法少女であるという運命を肯定し、イブやワルプルギスを倒しみかづき荘メンバー・神浜の多くの魔法少女・多くの一般市民を救っている。決して魔法少女であることに絶望し、彼女のドッペルのように目を塞いで現実から目を背けるといったことはしていない。神浜のドッペルシステムが崩壊した以上、神浜の魔法少女は皆遅かれ早かれ魔女になる。だが決していろははその現実に絶望なんかしていない。これのどこがバッドエンドなんだ?素晴らしい決着の付け方じゃないか。…持って行き方が雑極まるんだけど。

アニメ版マギアレコードは最後の最後でやらかしてしまったが、全体的にはアプリ版メインストーリー1部が原作であることを考えるとよくここまでの作品を作ってくれたと思う。マギカシリーズ初のまどか以外のアニメ作品としてクオリティには申し分なかったと思う。これを機におりこマギカ・かずみマギカ・たるとマギカ・すずねマギカといった他のマギカシリーズ作品のアニメも作って欲しいと思うが、アニレコは結局マギレコプレイヤーの外にあまりリーチしなかったっぽいので厳しいか…。とにかくありがとうアニレコ。

さて次はワルプルギスの廻天、楽しみだな~。
たつや

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