ウシュアイア

慎重勇者~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~のウシュアイアのレビュー・感想・評価

3.3
統一神界に暮らす新米女神リスタルテは「ゲアブランデ」という世界の救済の任務を与えられ、1億人に1人の逸材と言われる勇者・セイヤを召喚するものの、セイヤは強さとは裏腹に恐ろしく慎重な性格で、戦闘の前に”Ready Perfectly 準備は完全に整った。”となるまで入念なレベルアップと物資の調達を行い、倒した敵も死骸をひとかけらも残さないほど魔法で焼き尽くすほど。リスタルテはセイヤに翻弄されながらゲアブランデを支配する魔王打倒を目指すというなろう系ファンタジーコメディ作品。


様々な剣と魔法のパラレルワールドが存在し、統一神界に住む女神たちは勇者を召喚して勇者とともに割り当てられた世界の救済に向かうという世界観。

主人公?はチート級という訳ではないが、雑魚は瞬殺できるだけの実力をもつ勇者なのだが、敵方もなかなか狡猾で、主人公が必ずしも無双という訳ではなく、意外と入念な準備の上で辛勝していることが少なくない。主人公は慎重というよりも知略家で、その準備ゆえに行動が遅く、周りをヤキモキさせ、それに対して傲慢で横柄な態度をとるというのだ。異常なまでの準備への執着は、同じくCV梅原裕一郎の『ゴブリンスレイヤー』のゴブリンへの執着に近いものがある。

基本的にはセイヤに翻弄されるドタバタコメディがベースなのだが、この作品のミソは、なぜセイヤはこのような慎重で知略を巡らすのかということ部分である。そう思って観ていると、召喚時には既にこうした性格はできあがっていたので、召喚前のエピソードが関係していることがすぐに分かり、2通りの可能性が思い浮かんだ。もちろん2つの可能性の中に正解があったので、それほど意外性のある話ではない。それでも、話としてはコメディながらも12話で締めるところを締めて一つの話にまとめられていたのが良かった。

異世界召喚モノはたいてい主人公は調子をこいてピンチになるのび太君になりがちだが、本作ではそうはならない。自己中だけど努力はしているし、ぶっきらぼうながらもなんだかんだでいいやつじゃんで着地しているので、なろう系では異色の作品と言える。でも、やっぱりあくまでもメタ的視点が入り込んだなろう系には違いはない。
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