落合きゅうげん

モノノ怪の落合きゅうげんのレビュー・感想・評価

モノノ怪(2007年製作のアニメ)
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劇場版三部作記念。

物怪の調伏をサスペンスとして描くのが、やはり本シリーズの白眉。
妖怪変化の当事者が過去のある事件の当事者であったという因果、作中でいう「まこと」と「ことわり」、即ち真実と事実とを詳らかにすることで怪異をおさめられるという薬売りの闘い方は、ある意味で妖怪退治において最も理知的な対処法といえるものです。

蓋を開けてみれば各話どれもオーソドックスなストーリーではあるものの、しかしその面白さを下支えするのは、とにもかくにも野心的なアニメーション。
個人的なお気に入りは『海坊主』。
多層構造な舞台設定の遊び心や、物怪たちのさまざまな攻勢などにはワクワクしますし、アール・ヌーヴォー的意匠の数々は性愛的なテーマを匂わせると同時に、ジャポニズム文化の所産を時代劇へ逆輸入するかたちになっており、とっても芸術的。
しかし、洒脱さでいえば『化猫』ですかね。
でもお話が好きなのは『のっぺらぼう』で……。
……うーん、甲乙つけがたい!

……にしてもJUJUのエンディング・テーマ、時代を感じさせますねーーー!
“ザ・昔のフジテレビ”って感じ。


思えば2000年代の作品の数々には、こういった毛色の前衛アニメーションが多いような。
同じ監督の『空中ブランコ』とか、『鉄コン筋クリート』の劇場版とか、当時の湯浅監督作品・細田監督作品とか、『物語』シリーズも同じ枠で括れそう。あ、『絶望先生』とかもか。
産業市場の一般化とかCG技術の伸長とかが理由なんでしょうかね。
(…………えっ、いま知ったんだけど小中千昭さん脚本に参加してたの!?)

新作映画公開や2000年代リバイバルブームなどは勿論のこと、業界がターニングポイントにある今だからこそ、改めて振り返ってみる意義がありそうです。