ろいろい

月がきれいのろいろいのレビュー・感想・評価

月がきれい(2017年製作のアニメ)
4.3
"好きな人が、自分を好きになってくれるなんて… 奇跡だと思った…"

■キャッチコピー
『I love you をそう訳したのは、太宰だったか、漱石だったか……』
『わたしにとってそれは…まるで月あかり』

■作品について
プロデューサーの南健と岸が2014年9月頃、リアルな人間のドラマをやりたいと構想をはじめ、恋愛ものに決定。
高校生を描いた作品は多数あるため、学校や家といった枷がある中学3年生という年齢が選ばれた。
美少女アニメ風のキャラがあわないということになり、イラストレーターのloundrawをキャラクター原案で起用したことでも有名。
エンディング後のCパートでは小太郎と茜のクラスメイトや担任の園田に焦点を当てたショートエピソードが放送された。

■感想
中学校に通う1人の少年と1人の少女の初恋を丹念に描いた珠玉の純愛作品。
リアルタイムで視聴していたけど、流行りとかとは無縁の雰囲気で、当時はコアな人に人気だと思っていた。
が、気づいたら高評価の作品になってて嬉しい!
間違いなく私が観た「純愛アニメ」でトップレベル。

はじめに
本作は「恋愛アニメ」ではありません。「純愛アニメ」です。

ストーリーは
中学3年生の淡い恋を、地味だが丁寧なタッチで描いたもの。
劇的なドラマ展開は一切なく、中学生の初々しい恋愛模様が淡々と優しく描かれている。
けど、その地味さが非常に素晴らしい。
特に、中学生の恋愛として、いろんな制約があるなかの描写が秀逸。
「自由そうで自由がない」中学生。
金銭面にも乏しく、恋愛の経験も乏しい年代。
そんな年代の物静かな主人公2人が、恋をしながら少しずつ一緒に人生経験をしていく描写に心奪われる。

また、中学生の時に経験したことのある甘酸っぱさ、恥ずかしい失敗や挫折などが丁寧に表現されているので感情移入しやすく、
ストーリーが進むにつれて主人公2人の微妙な距離感と心理描写に胸がとても騒がしくなる。

中学生の異性の告白は、当人にとっては人生最大の冒険で、この上なく勇気のいる行為。
中学生の恋愛は全てが不完全で不安定、何かを間違ったらあっという間に全てが壊れてしまう恋愛。
そういったシーンが描かれている瞬間は時が止まったかのように見入ってしまう。

そして何といっても、主人公2人が魅力的。
ほとんどの恋愛作品は、高校生が主人公という作品が多い中での中学生。
高校生にもなりきれていないあどけなさを感じさせながら、初恋愛への嬉しさと戸惑いからの"もどかしさ"が、忠実に表現されている。
「伝えたいのに伝わらない」
「伝えたくないのに伝わってしまう」
そんな2人の揺れ動く感情が丁寧に掬い上げられていた。
しかし、常に尻すぼみしているような態度ではなく、必要な時には言うべきことは言うし、やるべきことはやるという芯の強さのようなものが感じられたのも好印象。
登場人物が自分の胸の内を言葉にして視聴者に対して語ることがほぼないのも制作陣のこだわりが感じられる。

もちろん、恋愛だけではなく、家族愛や友情も豊富に描かれていることは言うまでもない。

ラストはフィクションとしては納得のいくものではなかったかもしれない。
だけど、本作はノンフィクションの美を再現しており、皆が理想とするとても美しいラストだったので満足。
しかも、ラストでとあるシーンの意味がわかるようになったのは今でも涙もの。

他の恋愛名作とは一線を画す、リアルな恋愛がここにはある。
そう。この作品の登場人物は恋をしていた。けど、誰も恋を語ったりはしなかった。
これは制作陣の賜物だろう。地味で繊細な世界を見事に構築していた。

まとめると、
物語は平凡な恋の物語。その平凡な作品が非凡な作品になったのは、その平凡を丁寧に描いたからで、主張しないことの美徳を再現したからで、非常に文学的なストーリー構成をしたから。

大人になるにつれて忘れた事、胸の奥底にしまってしまった感情を思いださせてくれる本作は是非1回は視聴すべき!!
ただし、フィクションという夢の世界に浸るのがエンタメという考えしか受け入れられない人は見ないほうがいい。

以下余談。
コメディ要素は一切ない。