平田一

ヴィンランド・サガ シーズン1の平田一のレビュー・感想・評価

4.2
WIT STUDIOが満を持して挑む“本当の戦士の物語(サガ)”

「プラネテス」で知られている幸村誠さんの漫画を、WIT STUDIO(「進撃の巨人」「甲鉄城のカバネリ」)さん制作でアニメーション化した作品。11世紀初頭の北ヨーロッパからその周辺を舞台にしたヴァイキングの生き様を描きつつ、何を持って戦士であるか?を投げかける物語。監督は「いぬやしき」を手掛けた籔田修平さん。脚本は瀬古浩司さん(シリーズ構成・代表作「チェンソーマン」)と猪原健太さん(各話脚本・代表作「幼女戦記」)。

1002年のアイスランド。戦士に憧れるトルフィンは、頼れる父親・トールズと病弱な母親・ヘルガ、働き者の姉のユルヴァと平和にこの地で生きていた。決して暮らしは豊かでないが、彼は家族への愛情と、船乗りのレイフから聞かされる冒険譚、特に彼は「ヴィンランド」への憧れが強かった。そんなある日、故郷の島に一隻の船が来る。

それはトルフィンを“血塗られた道”へと誘う始まりだった――。


予告編に触れた時から早く見たくてたまらなくって、しかも何と放送局が「NHK」と来たらもう……堂々たる「大河アニメ」にしようというのが伝わりました。

実際見たら、そんなの忘れるぐらいのクオリティでした。

とにかくWIT STUDIOさんの気合の入れようが圧巻。プロローグのノルウェー戦からTVアニメの枠を超えて、劇場アニメのクオリティと言うしかなかったものでした。ところどころでCGが気になるところはあったんですが、一連の場面自体はとにかく完成度が高い。特に船から船を伝って、敵を制圧するトールズと、黒煙上っていく戦場の作画が非常に巧みかと。こういう戦闘場面というのは、カタルシスを感じさせなきゃならない印象だったんですが、これは巧みにそれを交わして、テーマを一層目立たせる。そうすることでトールズの心象にも踏み込めて、彼が何を考えて、望んでいるのかも分かる。ヴィンランド・サガにおいてはそここそが優先なのを、アニメ全話を見終えた今では、尚更感じ取れました。

加えて巧みに構築されてるストーリーにも感謝です。聞けば原作漫画になかった要素がいくつか追加されて、5話と6話はオリジナルのお話だって聞きました。ですが一番響いたのは第8話(「海の果ての果て」)の後半です。奴隷じゃなくて自分は戦士と断言しているトルフィンと、王族だった過去を持つ奴隷の少女・ホルザランド。この二人のやり取りは原作1話にあったんですが、アニメはそれを8話にしつつ、さらに中身を掘り下げて、未だに心に残り続ける名シーンになっていました。その訳は出来ることなら見て欲しいしか言えませんが、立場は違えど、隷属という共通を持つ二人が、ヴィンランドへの憧憬で心をゆっくり通わせる。オンエアで初めて見てから、未だに感動しまくりです(もし見るなら深夜頃か夜に見ること薦めます)。あの後のホルザランドがどうなったのかが知りたいです……

同じ意味なら18話「ゆりかごの外」もです。この回はクヌート王子に起こる変化が描かれますが、そのきっかけたる人物との「とある場所」での対面が、80~90年代ジャパニメーション的というか(大友克洋さん作品を少し思い出すほどに)、嬉しい意味で今のアニメっぽさが無くて良かったです。ルックも含めた空間描写や芝居とサントラの配合、それらが代案浮かばぬぐらいにピタリとハマっていましたし、21話(「再会」)や最終話(「END OF THE PROLOGUE」)ではさらに磨きに磨かれます。ホントもう驚くほどに右肩上がりばっかりです(あくまで個人の見解です)。

しかも同時にキャラクターの進化っぷりが素晴らしく、アシェラッドとビョルンのサーガはもはや泣くしかありません。ヴァイキングを率いる首領、謀殺をも厭わぬ外道……そんなアシェラッドの人生が大きく激変する前半、あらゆる感情すべてを以って、至ったクライマックスには、まさにもう偽りなしの「本当の戦士」であって、トルフィンに大事なことを残す場面は泣くしかなく、演じきった内田直哉さんには感謝の一言です。

そしてボクが一番好きなキャラクターのビョルンも然り。アシェラッドの片腕で、矜持を重んじる殺戮者で、トルフィンを決して嗤わず、彼を見守る器の主。アシェラッドの本心も既に分かっているからこその、命と引き換えに獲得した勝利の21話には、何度見ても大号泣を避けることが出来ません。演じる安元洋貴さんも本当に素晴らしくって、このアニメで安元さんの大ファンになれました✨

出来ることならもっと上手い言葉で熱弁したいんですが、もう全然感情にレパートリーが追い付けない。けれどハッキリ言えることは、絶対見るべき作品ですし、世界中に自信をもってオススメできる傑作です! 待望のシーズン2も現在オンエアの真っ最中。トルフィンがどこへ辿り着いていくのか見届けます!!
平田一

平田一