このレビューはネタバレを含みます
ストーリーは文句のつけようもない。OP、ED最高。
ただ、アニメ的な表現以外の海や空のような自然と心理描写の重ね方はもっと観たかった。
ゾクッとする描写もあれば凡庸なのもあって、悶々とするシーンは多かった。心象風景はもっと工夫出来そう。
重要なキャラクターが死後、より一層存在感を増して物語に影響を及ぼすってのが好きなので、トールズとアシェラッドがずっと最高。クヌートにとってスヴェン王が悪い意味での存在感を放ってて、不気味でとても良かった。
このシーズンのトルフィンは言葉の意味を噛みしめる様な台詞回しが印象的。彼が学びを深めていくのが、作品のペースや空気と良く合ってる。
トルフィンをただの理想主義だとか、クヌートとのやり取りを鼻で笑ったりするのは簡単だけど、絵空事や願望でなくそうあるべき世界を語る事の美しさに痺れた。
オルマルの笑われる勇気ってのは自分が住む国を見てるだけでもよく分かる。勝者も敗者もない世界で、誰かを笑うことで立ち位置を確認してる人は多い。
あとはアルネイズの墓の前で2人が交わした言葉が全て。
自分は、どんな人間にも『逃げたらいい』と力強く描いてくれる物語が好きだ。正気でいるのが難しい世の中だから。
根本を正すのがもちろん第一だが、そうしてる間にも切り捨てられ、生きることを諦める人達がいる。
アニメの出来以上に作者の思想そのものに共感している。
私達はこの時代のずっと未来を生きているが、バイキングの中からトルフィンという美しい男が現れる希望は捨ててはいけない。
ヴィンランド・サガは私達の物語だ。
シーズン1が好きでこのシーズンをつまらないって投げ捨てた人たちが、いつかまた違うかたちでこの作品に出会える日が来ることを願ってる。