ウシュアイア

ましろのおとのウシュアイアのレビュー・感想・評価

ましろのおと(2021年製作のアニメ)
4.4
孤高の津軽三味線奏者・澤村松吾郎を祖父にもつ澤村雪は、祖父の死により自身の演奏の方向性を失ったことをきっかけに、あてもなく上京する。雪は紆余曲折を経て東京の高校に編入し、様々な出会いを通じて自分の音を求めて苦悩する、というお話。


アニメ(第1期)は主人公が三味線同好会に所属し、高校生の大会に出場するという話なのだが、高校生がスポーツ・芸術を通しての友情・恋愛青春物語ではなく、『ブルーピリオド』のようにストイックに津軽三味線(芸術)と自分自身と向き合う話になっている。

主人公は大器晩成型の『ブルーピリオド』の主人公とは違い、サラブレットのハイスぺで、名人であった亡くなった祖父の薫陶を受けつつも、自分自身の演奏の確立に苦悩するというということで、芸事の「守破離」において「守」から「破」「離」へと昇華していく過程の話と言える。

話の中心が友情や恋愛ではなくハイスぺの苦悩の話ということで、一般化や共感しにくいかもしれないが、なかなか知ることができないアーティストの苦悩の物語として心揺さぶられるものがある。

原作は少年漫画誌の作品だが、原作者はずっと少女漫画誌で描いていた方ということもあって、人間関係は若干ドロドロしている。ただ、アーティストの苦悩は「努力・友情・勝利」の方程式にはあてはまらず、「孤独」がキーファクターとして作用してくるので、これくらいがちょうどいいのかも知れない。

そして、『ましろのおと』という題名も味わい深い。
(若干ネタバレのためタイトルについてはコメント欄にて)

この作品に限らず音楽をテーマにした作品は実際に音楽が入ってくるので映像化されてなんぼのところがあり、本作はアニメ化にあたって演奏部分を津軽三味線界の第一人者・吉田兄弟の監修を受けているということもあって、津軽三味線の魅力が余すところなく体現されており、OP、EDも素晴らしい。

しかし、映像はどうだろう。
静止画が多く、喋っていない登場人物は動いていなかったりと、かなりの省エネ。作画がひどいと言われている作品でも、昔のアニメに比べれば、と思ってあまり気にならない自分でも気になるレベル。

それでもストーリーと音楽で引きつけられるものがあり、GYAO(~1/10)の無料一挙配信で一気見してしまった。

第2シリーズは作画もよくしてクオリティの高い作品を期待。
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