ウシュアイア

フルーツバスケット The Finalのウシュアイアのレビュー・感想・評価

フルーツバスケット The Final(2021年製作のアニメ)
4.0
心に闇を抱え、呪われた一族が純粋無垢な少女・本田透との交流を通じて救済されていくファンタジーラブロマンス、ということで少女漫画原作でありながら、男女問わず楽しめる作品。

1stでの夾の救済、2ndでの由紀の救済と自己成長、と続くファイナルでは、一族の呪いが解けていく過程で、束縛から解放される人間の生きざまが描かれていた。

草摩一族にかけられていた忌まわしい呪いは一族に不幸や悲劇をもたらすものでありながらも、一方で一族の者にとってはアイデンティティであったり、一族の者同士の絆の証でもあった。呪いからの解放は、それはそれで葛藤を生み出す。

よくよく考えてみると、この草摩一族の呪いは、家族、学校、会社のメタファーになっていることが分かる。束縛をもたらしたり、関係がぎくしゃくしていたりして煩わしく感じる家族、学校、会社から自由になりたい、けれども実際にそこから自分から出ていったり、ある時期が来て終わりになる、予期せぬ形で突然終わりを迎えることには少なからず葛藤が生まれる。この作品の様々なキャラクターを通じて描かれる葛藤は、共感できる部分を見つけやすいと思う。

ファンタジーは、やはり設定に現実のメタファーが隠されていたり、登場人物の心理に普遍性があってこそ良作になるのだと思う。


ファイナルでは、これまでとは打って変わって、紫呉が本性を現したり、紅野の素性の判明、慊人の母・楝の登場により、『ママレードボーイ』や『彼氏彼女の事情』(これくらいしか知らないが・・・)でも見られたような少女漫画特有のドロドロ展開が待ち受けており、苦手な人は苦手だと思う。こういうのが苦手な人は京アニ作品に流れていくんだと思う。

また、男性目線で言えば、登場人物皆イケメンはともかく、逆ハーレム状態や、特に紅野のような女性に都合がいいが男性には共感しにくい男性キャラはやっぱり少女漫画だなー、と思わずにはいられない。

推しの十二支は?と言われたら、強いて言うならファイナルではほとんど出番がなかった綾女だろうか。自分には弟がいるので、綾女の気持ちがよくわかる。この作品の共感したキャラを聞けば、その人の人となりが分かると思う。
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