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終末のワルキューレⅡ 前編のGrenのレビュー・感想・評価

終末のワルキューレⅡ 前編(2023年製作のアニメ)
3.5
ジャックザリッパー対ヘラクレスの一戦。シーズン1の終わりで、佐々木小次郎がポセイドンに勝利する熱い展開に心が躍る思いをして、終了間際にジャックザリッパーがちょこっと出てきていた。人間側が勝ったからこそ、次はこんなやつで大丈夫か?と思った。ジャックザリッパー。世界的に有名な犯罪者だ。人殺しの犯罪者とはいえ、戦力的に強いかは疑問。殺した相手も一般人だ。既出の呂布、アダム、佐々木小次郎に比べれば、戦力が低いことは明らか。佐々木小次郎戦が良かっただけに、こんなやつで大丈夫かよというのが第一印象。そしていざ戦いを観ていると、惹きつけられるのはヘラクレスの方だ。人間を愛し、正義の心を持ち、信念に従って悪を砕く。神に対しても悪いと思うことには悪いと伝える不屈の精神を持つかっこいい男だ。一方、ジャックの方はというと、ヴェルンドでは強制的にワルキューレを神器とし、不気味な笑みとムカつくルー語みたいな喋り方で、全然魅力的じゃない。恵まれない境遇で、それでも幸せだと思えた母からの愛、それが偽りだった辛い過去を持ち、歪んだ心で悪に身を堕とした所には同情の余地はある。しかし、どう見ても魅力的なキャラに思えなかった。気付くといつの間にか神側のヘラクレスを応援している自分がいた。そして気付いて立ち止まった。出てくる登場人物たちほとんどがヘラクレスを応援していた。人間たちでさえ、負けちまえくらいな感じだった。これだけ血だらけになって、死力を尽くして人間の存亡のために戦う人間に対して、自分を含め、それってどうなん?と思った。そもそも、ジャックはなぜこんなにも懸命に戦っているんだ?人類に嫌われているのは明白。ともすれば、滅亡してしまえと思ってしまってもおかしくない。彼は心の悪に今でも身を委ねているのだろうか。むしろ、心の悪に苦しめられているのではないか?母からの歪んだ愛。それによって悪に目覚め、生前は悪虐の限りを尽くした。そんな男が人類のために戦っている。そこには、贖罪の気持ちもあったのでは?過去の自分の行いを悔いているのでは?ただ、要所要所で悪の心が表に出てくる。ワルキューレを無理矢理ヴェルンドしたのも、ヘラクレスに対して、正義の心をめちゃくちゃにしてやりたいと発言するのも、まだ悪の心がジャックの中に生きている感じだった。そう思うと、心がギュッとされる思いがした。そんなジャックを救おうとしていたのが、対戦相手であったヘラクレスだ。大きい男だよ本当に。戦いの最後には、本当の美しい心をジャックに見せ、抱きしめて死んでいった。ジャックは初めて自分の心は何色をしているのかが気になり、ヘラクレスのような心を目指そうとしたのではなかったか。
傷ついた体でよろよろと歩き、医務室へ向かうジャック。心は思いを新たにしていただろう。さっきと表情が全然違う。そんなジャックへ飛んできたのは、神側の観客から投げられた石片だった。当たった時の表情がまた切ない。あれでジャックの心が何色に染まったのか。また、このジャックの勝利に対しての人類側の反応があまりにも無さすぎる。生前の行いは簡単には消えない。ジャックがこの先、ヘラクレスの思いを忘れずにいて欲しいと願うばかりだ。
雷電対シヴァの戦いは、とても良かったが、シヴァの攻撃があまり強そうに見えなかったので、迫力不足かなという感じ。雷電かっこよすぎ。好きになりました。
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