映画ケーン

母をたずねて三千里の映画ケーンのレビュー・感想・評価

母をたずねて三千里(1976年製作のアニメ)
5.0
高畑・宮崎アニメはほとんど観てるけど、なぜ彼らが子供たちの為にアニメを作るのか初めて分かった。

儲けを考えずに働く父へ複雑な感情を抱く、「家族」という狭い世界で子供として生きるマルコは、母に会いたいという理由から旅をして、貧富の差や不条理といった世界に触れながら、色んな人に出会い、お金やパンを貰ったり、泊めてもらったりという優しさ、小さな「自己犠牲」に触れながら成長していく。

44話でマルコは、母に会いに行く為の金で、父が自己を顧みず病人を診ていたように、自己犠牲の精神を受け継いで、他人の為にお金を渡す。そこには、金をもらわないと働かない医者に対して怒る、序盤の様なマルコは存在しない。

この成長、よい成長の為には、「世界を見る」必要があった、ひとつの列車の中でぎゅうぎゅう詰めになっているプロレタリアと絢爛豪華な車内で優雅に食事をとるブルジョワをマルコが見るシーンのように。それを擬似的に行うのがこの「アニメ」であり、高畑勲が異常なまでにリアリズムを追求する理由で、彼らが子供向けにアニメを作る理由。

「母に会いたい」という子供じみたマルコの衝動的な旅が、次第に色々な人に勇気を与える物語という抽象的な意味合いへとシームレスに流れていく上手さ!
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