このレビューはネタバレを含みます
今まで触れてこなかったこと後悔するような名作。上質な児童文学のような作品です。
出てくる大人たちが、若者に対する責任を果たそうとする、割といい大人が多い。特にマッチョな男たちが気持ちいい奴が多い。
上司が腐っていても軍人は上司の命令に従うべきか?哲学者ハンナ・アーレントが『凡庸の悪』と言ったような問題をわかりやすくエンターテイメントにしている。
また錬金術は近代合理主義や利益を追求する能力、原子力の技術や遺伝子操作の技術などメタファーに感じられるが、それを正面から否定するわけではなく、扱う人間次第、というスタンスをとっているように見えるのは好感がもてる。
クライマックスでエドが錬金術より仲間との繋がりを選んだところも、2000年代前半のまだ社会に対して信頼が残っていた日本社会を象徴しているようで愛おしい気持ちになる。
この後に出てくる『進撃の巨人』などは明らかに前の世代に対しての怒りが原動力になっていて、若者の社会に対する信頼が無くなって行く。この『ハガレン』は信頼のあった時代の最後の作品だったのかもしれない。