KunihiroMiki

妄想代理人のKunihiroMikiのレビュー・感想・評価

妄想代理人(2004年製作のアニメ)
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起こる事件にはそれ相応の動機があり、現実からさえ逃げなければ人間は世間とほどほどに折り合いをつけることができる、という矜持が通用しない世の中になりつつあることを肌で感じて混乱する猪狩刑事。その姿に重ねずにはいられないのが「ノーカントリー」でトミー・リー・ジョーンズが演じたベル保安官。
実態のない暴力は実態がないからこそ大きくなり伝染していく。妄想代理人が鋭いのは、その媒介をマロミという一見無垢な「キャラ」にしたことだ。美少女フィギュアと対比されるそれは、不安やトラウマから妄想へと誘い込むことを使命に生まれてきたもので、その先に現代の「推し」「沼」文化または幼稚化と狭窄、「あなたはそのままで素晴らしい。すべての嫌なことからは逃げて良い」と無責任な麗句で他責を正当化する社会が見通せる。

社会の理不尽との折り合いがつけられない人々の肯定、または旧来の大人像の拒絶とオタク的な引きこもりを、初潮と死の隠喩で表現するのはすごい。
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