晴れない空の降らない雨

KEY THE METAL IDOLの晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

KEY THE METAL IDOL(1994年製作のアニメ)
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 90年代に山ほど作られたOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)のひとつ。どこにそんな金があったんだか、英語吹替版まで作られている。
 話はこんなん。綾波の原型みたいな無感情系セリフ棒読み主人公、自称ロボットの女子高生キィが「友達3万人できたらお前は人間になれる」という祖父の遺言に従い、ド田舎の故郷から上京する。新宿でさっそく悪いおじさんに引っかかってエロビ(死語)デビューさせられそうになるが、たまたまピザ配達に来た旧友のさくらに助けられる。紆余曲折あるが、友達を3万人つくるにはこれしかないということで、アイドルを目指すことになる(大きいお友達は友達なのか)。
 といった話の裏側で、「人間の生命エネルギーっぽい何か」を動力源にした自立歩行型ロボット兵器を開発中の悪いおじさん達と、どうやら超常的な力を秘めているらしいキィとの因縁が交差する。
 
 正直、人を選ぶ以前に、人に勧めるほどの出来でもない。風呂敷広げる割にはスケールが小さいし、最終話の手前で延々と過去話を説明するし、桜ちゃんはひたすら可哀想だし、作画もイマイチときている。そもそも観る方法がなさそうだけど。
 しかしこのアニメ、何というか「90年代」感がすごくあって、そこは気に入っている。80s末~00s前半のSFアニメに特有の陰鬱な雰囲気が、描かれた「退廃的で猥雑で危険な東京」の中に濃厚に漂っているのだ。深夜のレンタルビデオ店さえ懐かしく感じる。この東京の描写は、作品の1つのテーマだったのだろう。方向を見失ってエネルギーが空転しているような、腐れ落ちる直前の果実のような時代。特にオープニングの雰囲気がよく、見返すときはつい飛ばさず観てしまう。
 古き良きアニメの特徴と言えそうだが、オッサンたちのキャラがとにかく濃い。キャラのガタイがやたらいいのも、この時代のアニメあるあるか。悪いオッサンズの顔はひたすら凶悪で、ゾンビのような肌で、シワの書き込みがやたら多く、ゴマ粒のような黒目しかない。そしてどいつもこいつも変態である。
 キャラの中では吊木プロデューサーがお気に入り。