このレビューはネタバレを含みます
前作に引き続きキャラクター、ストーリー、画、どれをとっても良かった!
変身シーンのBGMも何種類かある?よね?こまかー!
蓬:母親の再婚相手との食事会:独り立ちしたいのかバイト三昧の日々。
10話目の過去の話なんかは、他の人に比べると少し弱く感じるけれど、全体のテーマであろう〝儘ならなさ〟、〝不自由さ〟としてはかなり想像しやすく必要なポジションだったように思う。
それを考えると、母の恋人に貰った入学祝いを募金箱に入れちゃうシーンなんかは本当に最後まで良い味を出している。
彼は誰よりもダイナゼノンに乗る気のなかったキャラクター。自分が救えなかったものと救えたものを目の当たりにしていく中で戦うようになる。
夢芽:仲は良くなかったのに、部の発表会に誘ってくれた姉の死に囚われている。
序盤の「約束を守れない」は、「姉との果されていない/果たされなかった約束」の影響だろう。
おそらく姉は、途中、夢芽が蓬に対して「大丈夫だから……!」と強がったのと同じように、恋人に頼れなかった。また、その話の【知恵の輪が落ちたのを追いかけて水門の上から落下する】というのは、姉の死をそのままなぞっているのだと思う。(後々、姉が自殺でないことは判明しているし)
端々に見られる夢芽の感情表現はなかなか可愛らしく(夏祭りに誘うところとか、ソルジャーに乗り合わせたちせに向ける視線だとか)、本当にただの普通の女の子として描かれていてそこがとても良かった。
蓬と夢芽は3歩進んで2歩下がるという感じが青春らしく甘酸っぱいが、そこに足されるシリアスな夢芽の事情、寄り添う蓬という図が良いバランスを生み出している。とても潔い告白やラストに見せるその後の関係性も気持ち良いものになっていて素晴らしい。
浴衣で「ごめん、遅くなった」というシーンは、1番最初の待ち合わせを彷彿とさせ、2人の関係が大きく進んだ回であったこともあり、作りが非常に上手いな〜と感じた。
暦:誰もが抱える「もしもあの時こうしていれば」の塊のような人。
ダイナゼノンという『自分にできること』、或いは『運命的に与えられたもの』に積極的になっている点も、『今の何者でもない自分』に背を向けているからなんだろうな。
でも、10話目で〝たられば〟の先を見た暦は『今』に戻ることになる。後ろ髪惹かれつつも、稲本さんとの未来は結局そこにはなかったからかもしれない。
ちせ:学校に馴染めない不登校っ子。どうやら家はお金持ち?(グランドピアノある!)
本作でほとんど戦うことのないキャラクター。
彼女から生まれたゴルドバーンは常に『守る』行動をする怪獣で、戦うことをメインにしていない。
また、頑張って制服を着てみるも「似合わないよなぁ」と眉を下げ校門をくぐらず、最終話では「あんなもの(制服)似合って堪るか」と笑う。
全話を通し、まるで「逃げても良いよ」「戦わなくたって良いんだよ」と言ってくれているようだなぁと感じた。
疎外感を抱いたり、自分の居場所がなくなるのを恐れたりと悩ましい表情を見せる一方で、誰よりも有用なことを言う印象もあり、そうならざるを得なかったこれまでの暮らしを想像すると胸が痛む。
隠されていた左腕にはタトゥー?ボディーペイント?元はリスカの痕があったのかなーってのは考えすぎでしょうか。
いずれにしても、これはどのキャラクターにも言えるけど(最後に残った傷も含め)、「負った傷を誇って良いんだよ」、「疎ましいものでは決してないのだ」というメッセージが込められているような気がした。
>怪獣側につけば何にも囚われず、自由になれるのに。人間は自ら自由を捨てて不自由になっていく。
>かけがえのない〝不自由〟を生きていく。
人との関わりはどうしたって不自由を生む。
最終話では皆が1歩踏み出すけれど、自分を縛る何かを1個得たとも言える。
けれどそうやって生きていくのが人間であり、そこには素晴らしい出会いも、苦しみもあって、だから良いのだ。
……という、人間讃歌に近い作品だと思った。