あんへる

白い砂のアクアトープのあんへるのレビュー・感想・評価

白い砂のアクアトープ(2021年製作のアニメ)
2.8
【2021年夏・秋アニメ作品{全24話}】

近年は爆死続きのイメージが強いPAが再起をかけておくる渾身のお仕事シリーズ第4弾。
…と本当はいきたい所だったんだろうけど、うーん、、正直これじゃかなり厳しいよなぁ。。

息を吞むような背景美術の美しさに、派手さはないが繊細で堅実な作画。映像美という観点でいえば、そこは流石のPAクオリティといったところで一定の安心感はあった。
加えて、草野華余子がプロデュースしたいずれの主題歌も良かった。
アニメ作品に於いての、外枠の品質という意味では素晴らしかったと思う。

しかし、そうは言っても肝心なのは物語の質。
率直な感想として、これに2クールも費やす必要ってあったんだろうか?ってところ。後半部分は冗長気味に感じる要素があまりにも多かった気がする。
ハッキリ言ってあまり出来の良い話とは思えなかった。
とか言いつつ結局最後まで観てしまったのは、それは偏に自分がPA信者だからって理由に尽きる。それしかない。
逆に言えば、そうでもなきゃ2クールも付き合ってられなかった。


少女たちの夢と現実、挫折と成長を描くという、謂わばお仕事シリーズの伝統的且つ王道的なストーリーラインだったとは思うが、裏を返せばそれ以上のオリジナリティや付加価値は無く、アイデア性に乏しい話という印象が強い。
諸々を贔屓目にみても、面白いと感じるポイントは少なかった。
何に気を遣っているのかしらんが、もう少し物語に気の利いた捻りやギミックを一つ二つ用意して欲しかったというのが本音。

様々なテーマを扱っているのはいいが、そのどれもが中途半端でエピソードとして弱い。物語全体を通してフワフワしててあまり印象に残っていない。
やはりある程度テーマを絞って、1クールで纏めた方が物語にメリハリは出てたんじゃないかとも思う。
キジムナーとか、がまがまの白昼夢とか、中途半端なファンタジーも正直無駄要素だったと思う。描かれ方が曖昧過ぎて目的が割と謎。

くくると風花の関係性は一つの大きなテーマ且つストーリーの軸になっていたが、結構色々な解釈が出来る描かれ方だったと思う。
シンプルな友情とも、はたまた百合っぽい関係とも、または別の形の愛とも…
観る人によって感じ方も捉え方も様々だとは思うが、あの関係は自分には“共依存”に見えた。
でもまぁそれを言ったらあの二人だけでなく、他の殆どのキャラも含めて同じ関係性だったような気はするが…。

共依存といえば、有名な所で「俺ガイル」や「リズと青い鳥」なんかでも描かれているテーマの一つではある。
そしてそれらの作品は、共依存からの脱却や、別の新たな関係性への昇華、といった最終的には一つの明確な“答え”を用意し、提示してくれた。
単純にそれらの作品と比較して、本作の描かれ方は酷く中途半端で肝心な“答え”の部分を有耶無耶にしたまま終わってしまっているように感じる。早い話が何も解決していない。
現実的に考えれば、二人にとってはそれはそれで一つのハッピーエンドの形なのかもしれんが、作品の結末としてはかなり消化不良で何処か納得できない感覚は残る。


PAってスタジオがオリジナルアニメ制作に拘りとプライドを持っているのは重々承知だが、やはり近年は結果として芳しくないのは周知の事実。
本作を含めた特に最近の作品なんかを観てて思うんだが、作風が今一つミスマッチなものが多いような気もする。
簡潔に言えば、題材が爽やか“過ぎる”といいますか。
本作でいうと沖縄が舞台という点。地方の独特な雰囲気や空気感を写実的に描くことができるのは、実際に地方のスタジオであるPAだからこそなせる業だと自分は思う。
こういう言い方は語弊があるのかもしれないが、日本の田舎って陰鬱で排他的といった暗いイメージが強いと思う。
そういったネガティブな部分をアニメーションに落とし込める技術はピカイチだと思う。
その点何処か異国情緒が漂い、晴れ渡った空、澄み切った海、といった明るく爽やかなイメージが常に付き纏う沖縄という舞台はPA作品としての強みをあまり活かせていないようにも感じた。

やはり個人的にPAにはもう一度「true tears」のような作品を期待してしまう。
原点回帰というのは少し意味合いが違ってくるのかもしれないが、暗くドロドロとした泥の中に一握りの爽やかさを内包したような、自分はそんな作品を観たいですね。
その辺り、うまくマッチした原作付きのアニメ化でもすりゃ一発なんだろうけどねぇ。。


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[主題歌]

OP
 (前期) ARCANA PROJECT「たゆたえ、七色」
 (後期) ARCANA PROJECT「とめどない潮騒に僕たちは何を歌うだろうか」

ED
 (前期) Mia REGINA「月海の揺り籠」
 (後期) 相沢梨紗「新月のダ・カーポ」

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