ソラアユム

炎炎ノ消防隊のソラアユムのレビュー・感想・評価

炎炎ノ消防隊(2019年製作のアニメ)
3.6
『永遠の炎に帰せ…』


人々が原因不明の人体発火現象により“焔人”になってしまう世界で、発火能力を持ち“第三世代”と呼ばれる能力者の少年、森羅日下部の闘いを描く少年マガジン連載中で大久保篤の漫画『炎炎ノ消防隊』のアニメ化作品

唯々もったいない…
世界観やキャラクター、デザインなど面白くなりそうな材料は揃っているのに、肝心のストーリーの語り方が巧くないように感じました(決してつまらないわけではない)。

ストーリーが進む中で色んなイベントや事件、闘いが起きるが、その後の事後処理描写が頗る甘い。というか欠落している。新人消防隊員限定参加の大会が行われて、人命救助を学ぶという序盤のエピソードも新人大会スタート→と思いきやすぐにジョーカーと森羅が闘う→決着つかず→特に何もなく新人大会終了という具合。この大会=イベントがジョーカーと森羅を闘わせたかっただけの舞台立てでしかない。新人大会において、何か新人消防隊員としての学びを用意しないから主人公が成長している様にこちらとしては感じにくい仕様となっています。すべてのエピソードが「このキャラとこのキャラを闘わせたい」という作者の意図が露骨に見えて、そこまでの過程=ストーリーがどうしても軽く見える。

例えばプリンセス火華が大隊長を務める第5特殊消防隊は一般市民の安全などお構いなしに焔人を鎮魂する組織として描かれており、「お、これは森羅(もしくは第8特殊消防隊)に渇を入れられて、組織自体が更生するんだろうな」と思っていたら、ここも特に解消されず、しれっと主人公が属する第8に協力的な味方になっている。どれだけ悲しい過去があろうが悪行は悪行として処理するべきではないでしょうか。そういう各エピソードの事後処理が甘く、いちいち突っ込んでいるとキリがない。第1特殊消防隊で裏切り者が出る→何とか森羅が事態の収拾を図る→管理職である第1の大隊長への処分は特になし、下っ端の環のみ謹慎処分という流れもあり得ないです。組織に裏切り者が出た件について、その後追及される描写はなく、第1の様子も描かない(カリムという個人のみ)。結局、環を第8に入れたかっただけじゃないですか。再三言うように、『炎炎ノ消防隊』には特殊消防隊の組織的な事後処理が欠落している。それでも御咎めが無いのは、特殊消防隊という組織を客観的に見て、糾弾するマスコミや一般市民の視点も欠けているから。少年漫画にとやかく言うつもりはなかったのですが、他のヒットしている少年漫画と読み比べてみるとストーリーの語り方に雲泥の差があるように思います。まぁアニメのレビューで言うことではないかもしれませんが。

27巻以上も続いている漫画なのでやはり面白いは面白いです。原作未読のため、アニメ化にあたっていくつかセリフや描写を省いたのかもしれません。主人公含め、キャラクターは立っていますし(アーサー、紅丸など)、メインストリームである“焔人の秘密”“大災害の真相”“アドラバースト”“伝導者”などストーリーを引っ張る力はしっかりあるので『弐ノ章』に期待したいです。

鑑賞期間:2021年2月24日~3月1日