あんへる

サマータイムレンダのあんへるのレビュー・感想・評価

サマータイムレンダ(2022年製作のアニメ)
3.9
【2022年春・夏アニメ作品{全25話}】

意味がないな 君が居ないと
そんな夏だけが残っていく

アニメに限らず、(ギミックの特性上)所謂ループものの作品の主題歌ってほんと名曲が多いと感じてしまう今日この頃。
前半クールのOP主題歌、マカロニえんぴつの「星が泳ぐ」が素晴しいね。
何処か物哀しいメロディラインに叙情的で意味深な歌詞が非常に味わい深い。特に序盤の作品の世界観との親和性が高く、まずはOPから惹き込むというTVアニメに於ける良作のセオリーを忠実に体現していると思う。
最終話の後に歌詞を意識して聴いてみても、また少し聴こえ方が違ってきて胸にくるものがあるよね。
あとセルフヘッドショットのポーズをとる慎平がペルソナ3のキタローを彷彿として個人的にお気に入り。

“夏”を冠したタイトルにSFサスペンス、和歌山の離島というロケーションの時点で、正直勝ち案件だなと思った。
あとは個人的に原作をよく知らなかったのはデカかったと感じる。
原作は以前序盤のほんの触りの部分だけ読んだ記憶があったが、物語の全貌などは全く知らなかった。そしてもし仮に原作をある程度読んでいたなら恐らく自分はこのアニメを観ていなかっただろうな、と思った。
というのも、本作は中盤以降で結構作風が変わる。というより、少年誌系(主にジャンプ系)の作品が避けては通れない展開になるというか、有りがちといえば有りがちな展開なんだが、これがハッキリ言って全く好みではなかった。
前半部は志倉千代丸の科学ADVっぽいテイストを部分的に感じつつも、現代的にローカライズされたひぐらしみたいな独特なムードがあったが、それ以降は割と長い時間凡庸な印象に留まってたのかな、というのが正直なところ。

実際、細部の展開や設定の多くは後付けであると原作者自身が明かしているらしいが、今思えばそういった難しさが中盤以降の脚本の“迷い”に現れていたんじゃないかと思う。
まあ極端に悪く言ってしまえば、殆どこじつけみたいな都合のよすぎる設定が目に付いて気持ちが離れそうになる瞬間が多々あったのも事実。
それでも集中力が途切れなかったのは、やはりアニメの作り手としての制作陣の頑張りというか踏ん張りなんだろうな。

ここぞの場面で主に映像的な魅力がかなりあったんだが、特に12話や15話のアクションシークエンスなんて最早TVアニメの品質ではない。普通に映画館で流してカネとっていいレベル。と少し前なら何の疑いもなく思っていたけど、哀しいかな昨今のTVアニメって映像のクオリティレベルがインフレしまくってて正直あまり驚けなくなってきてるんすよねぇ。(もちろん滅茶苦茶ハイクオリティなのは間違いないが)
だから今闇雲にアニメ映画なんて作った所でこんなん日頃から見せられてる側からするとハードルの上げ幅が無駄にえげつねぇだけにそりゃあ作り手もしんどいよなぁなんて。
あと制作スタジオのOLMって今までは基本キッズアニメの印象しかなくて正直よくわからなかったんだけど、最近ではこういった所謂深夜アニメの単独制作を多く手掛けていて、今回ここまでクオリティの高さを魅せつけられちゃうと今後も注目せざるを得ないよね。

結構長文になってしまったので強引に纏めるが、
諸々あったけど、やはりラストは無条件でエモい。
わかってはいたが、これをやられるとエモいと言う他ない。
実際、終わってみると細かい部分を度外視できるくらいには美しい最終話だったと感じる。

因みにお気に入りのキャラクターは南方ひづるです。
何処か達観していて主人公へ道を示すような、まあこの手のジャンルでは有りがちなキャラではあるんだろうが、やはり好きなんですねぇ。
ちょっとだけマブラヴの夕呼先生を想起しました。

最後に一点だけ欲をいえば、僕はスク水姿の君にもう一度だけ会いたかったよ。

嘘ではないよ そうでもないかな
もう行かなくちゃ、バイバイ


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[主題歌]

OP
 (前期) マカロニえんぴつ「星が泳ぐ」
 (後期) 亜咲花「夏夢ノイジー」

ED
 (前期) cadode「回夏」
 (後期) りりあ。「失恋ソング沢山聴いて 泣いてばかりの私はもう。」

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