ぺん

機動戦士ガンダムのぺんのレビュー・感想・評価

機動戦士ガンダム(1979年製作のアニメ)
4.4
ククルスドアンの島が劇場版としてリメイクされる、冗談みたいなホントの話が控えています。
なのでちょっとずつテレビ版を見直し。開戦1ヶ月で地球総人口の半数が失われたってどんな破滅的状況だよ…
過去に見直すときは劇場版三部作の方が多かったから永井一郎さんの毎回入るナレーションも新鮮だな。
自分の産まれる5年以上前の作品なので、全体的な古さは否めないものの面白い。

今見ると、才能があるからとは言え民間人の少年なのに戦場に駆り出されるアムロも気の毒だし、一応未成年の兵卒ブライトさんも気の毒。
昔は「アムロはワガママや」なんて感想も持ったけど、彼は彼自身の言うようにできることを本気で頑張っている。
ガンダムを乗りこなせるようになり、イキリ状態になってからそのプライドを叩き潰される流れも面白いし。
大人に苛まれ、戦火で弱っていき、そこから立ちあがろうと決意する姿は立派だと思ってしまう。「僕は男だから」なんて今の時代では描けないけど。
富野アニメに付き物の毒親も結構な毒っぷりであるし、生活力がないのも理解できる。母も父もアムロを愛してたんだろうけど、子ども以上に大事な存在が別にあったと察せる…

有名な「2度もぶった!」のシーンもなんかブライトさんの八つ当たりもあるんじゃないかと感じなくもない。だけどブライトさんだって辛いのよね。
ここから後シリーズにかけて二人が無二の戦友になっていくんだな。
しかし鉄拳制裁やビンタシーンの多いところも時代を感じる。
「アルティシアにしては強すぎる」なんて驚くシャアだけど…お前に言われたくないわと思うw

上官が全員戦死したから民間人でも戦えとの無茶振り。「古来未成年が戦場に出た例もなくはない」とお偉いさんからも言われてしまう。
激化する戦時中のジリ貧状態を作る設定作りが上手かったんだろうな。
命が一番で軍人の話を聞かない避難民、子どもから食事を盗み取る大人、民間人に対して暴挙に出る兵士たち、現場を知らず難題を押し付ける上層部。
マイルドになっているもののシリアスな戦争描写を入れているのは驚く。
正義対悪の構図ではない戦争を描いたロボットアニメ、よく言われるように当時はさぞ驚かれたんだろう。

いつでも賢く心優しいミライさんの魅力にもやっと気づく…こりゃモテるわ。
またミライさんはやたら勘が鋭いんだけど、ニュータイプの素質があったことも初めから描写されてたんだね。
それからミハルのエピソードは全ガンダムで一、二を争う泣ける回でした。

でも好きなモビルスーツはギャンです。マクベの意外と好戦的で小狡いのも嫌いじゃないです。
ドムとラルももちろん好き。
ギレンは父親にヒトラーの尻尾って喩えられてたけど…皮肉な最期でした。

そしてククルスドアンの回。作画崩壊ばかり取り沙汰されるものの、確かに1話限りで埋もれさせるにはもったいないエピソード。
おそらくより反戦色の強めなリメイクになるはず…劇場版監督の安彦さんの思想や意見も踏まえれば自然に思える。
モビルスーツや戦闘シーンの格好よさに一番比重を置くファンや安彦氏の思想と真逆のタイプのファンから意見は分かれるだろうものの、改めて楽しみだな。
メカ描写のカッコ良さと反戦メッセージって宮崎駿なんかもそうだけど、矛盾しても両立してしまう。

ニュータイプの設定は今でも面食らうが、人と人がしがらみを越えて分かり合うのは超能力を持ってしても難しいんだな。
兵器として限界まで酷使されるガンダムのラストシューティングも絵になる。ククルスドアンの回ともリンクする場面。
兵器なんて必要ない世界が理想なんだろうけど…ラストに希望とやるせ無さが紙一重の感覚を味わえることもよかった。
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