Pewterspoon

BANANA FISHのPewterspoonのレビュー・感想・評価

BANANA FISH(2018年製作のアニメ)
4.7
NYを牛耳るコルシカマフィアからの自由を求めて戦うストリートギャングのカリスマ・アッシュが、「バナナフィッシュ」と呼ばれる薬物に関わる国家レベルの陰謀にともに巻き込まれた日本人の大学生・英二との邂逅で無償の愛を知り、大人に踏みにじられて修羅の道に堕ちてしまったアッシュの魂の救済を描いた作品。


国家を揺るがすスキャンダルと陰謀がからむガンアクションサスペンスであるが、主軸はあくまでもアッシュの魂の救済の物語。アッシュの苛烈な境遇と度重なる悲劇に、英二との絆により少しずつ救われていく展開は全24話のどのエピソードを取ってもどれもエモーショナル。2,3話続けて観てしまうとぐったりさせられる。眠る前には見ない方がいい。

普遍的なテーマを扱っているため、舞台や時代は自由だと思うが、時代をベトナム戦争直後からイラク戦争後の現代に移した点は賛否が分かれるところだと思う。イラク戦争では『アメリカンスナイパー』のようなトラウマ事例があるものの、唯一アメリカが勝てなかったベトナム戦争で多大な犠牲の上に帰還した兵士の間でPTSDと薬物が蔓延していた時代とはリアリティが違う。NYの治安状態もジュリアーニ、ブルームバーグ市長時代の前後ではまるで違う。しかし、原作から30年経っても、少年への性的虐待問題がリアリティのある話になっているのは、残念極まりない。

声優陣は放映中に亡くなった石塚運昇さんを初めいずれも演技派がそろっていた。特に終盤に登場したブランカ役の森川智之さんはおいしいところをかなり持って行ってしまったくらい。

ここまで濃厚なエピソードを見ていると、無償の愛による憎悪と争いからの救済の物語は、様々な作品から見出すことができ、かなり普遍的なテーマであることに気づかされた。

山崎豊子の『白い巨塔』は医療界の不毛な権力闘争を描いた社会派作品だが、結末の部分では権力闘争に明け暮れた外科医財前五郎が対立しながらも真の友情を貫いた里見修二に救済されている。

完結していないが、『ゴールデンカムイ』は歴史ロマンアドベンチャーの作品であるが、苛烈を極めた日露戦争を生き抜いた不死身の杉元が純粋無垢でたくましく生きるアイヌの少女・アシリパとの交流によって救済されるストーリーも軸の一つになっている。ネタバレを含むが、杉元がアシリパに父の仇である○○(ネタバレ)を殺させないようにし、アッシュが英二をゴルツィネの館から救出するときに英二に殺しをさせないよう銃をもたせずに守っており、メンタルの面では杉元とアシリパの関係はアッシュと英二の関係に近いことがうかがわれる。ただし、アシリパさんは羆に襲われている杉元を救出しており、戦闘力はかなり高い。

あと、『モンテクリスト伯』を原作とする2004年の『巌窟王』も、主人公に据えたアルベールの存在により、復讐鬼の伯爵ことエドモン・ダンテスの救済にもつながっている。(『巌窟王』はおすすめなので是非見て欲しい!)

もっと言えば、『三月のライオン』や『フルーツバスケット』なんかもそう。という具合に、本作はいろいろな作品の見方を変えてくれた。

最後に吉田秋生先生の漫画の『夜叉ーYASHA』のアニメ化も希望したい。20年くらい前に中途半端な形でドラマ化されたが、完全な形で映像化して欲しい。しかし、ウィルスによるバイオテロ事件の話なので、当分は難しいだろうか。