ブリムリー

オッドタクシーのブリムリーのネタバレレビュー・内容・結末

オッドタクシー(2021年製作のアニメ)
2.4

このレビューはネタバレを含みます

伏線回収、気を衒うということにおける王道アニメだと感じた。

【良かった点】
・絵柄が見やすく、落ち着いているため、視聴時のカロリーが低い。

・動物キャラクターと現代社会の直接的な表現のシナジーが見てて楽しい。ハッピーツリーフレンズを見ている時の感覚に近い。

・ヤノの押韻はアニメ界じゃかなりセンスあると思う。と思ったらmeteor氏が声を当てているらしい。本人の押韻スタイルと似てるし、割とセリフ(リリック)を考えているのだろうか。魅力的なキャラでした。

・田中の話はとても良かった。このアニメの中で共感できる数少ないキャラクターの1人。欲しい物を前に、普段有効なストッパーが上手く効かないこと、分かる。あと客観的には大したことないことで無敵の人になっていることが素晴らしい。本人も述べていたが、世界憎しに先立つ自己嫌悪が、社会への特攻を成立させてしまうのだろう。田中の具体的な体験など、その意味では直接的なトリガーではないのかもしれない。こういう弱者の葛藤を田中はよく体現していて、非常に共感できる。

・話の進み方がスムーズで見やすい。

【疑問に感じた点】
・あまりにも話が読め過ぎる。
 ①医者が、「俺が何に見える」と小戸川に尋ねるシーン、酷過ぎる。文脈ぶっ壊してまで伏線を入れて、伏線だと気付かれたら本末転倒だ。あれがなかったら最後に驚けたかもしれないが、伏線回収という美学に囚われてしまったのか、とにかくあのシーンでスコア-2.0くらいの重みがある。容易に「主人公に何らかの病気があって人が動物に見えてるのかなぁ」とか想像してしまう。そうなってしまったら終盤での驚きは減るばかりだ。
 ②殺人犯も候補が1人しかいない。もし二階堂の独白の後、山本目線で描いていたら、視聴者にとっては容疑者が二階堂(本命)か偽三矢(対抗)の2人になっていたのに。二階堂の無罪が確定すると、犯人予想が容易になってしまう。1クールで猟奇的殺人を描く余裕がないことを踏まえ、私怨による殺人だと仮定すると、本物の三矢を殺して得するのは偽三矢しかいなくなる。ただ、これに関してはいずれにせよ最後のシーンでカタルシスを感じることができた。やっぱね、にも気持ちよさはあるだろう。それに偽三矢がサイコパスだったことは想定外で、とても驚けた。

・所々、キャラの行動原理が謎。
 ①山本: かっこいいけど非常に不可解なキャラクターだろう。彼はミステリーキッスに人生賭けてるくらいの思い入れを主張していた割に、美人局はするし、偽三矢を投入するし、何考えてるのか分からん。グループ愛の割にメンバーに対しての愛がスッカスカ。いや、自分が成り上がるためにグループを利用してる、とかなら十二分に理解できる。でもそうでもないらしい。彼はなぜあそこまでグループに執着しているのだろう。
 ②小戸川: 作中ずっと謎。あなたの正義感はどこから?凄惨な過去を匂わせる描写だけでは根拠にならない。皮肉屋で、平凡な生活を欲するキャラが、なぜヤクザ両成敗を目論むのか。個人的には、初めは痛おぢを描きたいのかと思った。実際、痛々しいシーンは幾度かあり、いわゆる正統派主人公にしたくはないという意思が伺える。では、なぜ、いつから、正義感が芽生えたの。

・アルパカが苦手。プリズンブレイクのサラ然り、戦犯が物語終盤で活躍して好感度上げに来るマッチポンプなんとかならんかね。百歩譲ってその展開を飲み込むにしても、これでチャラと言わんばかりの図々しさと来たら。思い悩むシーンが少ないからなんかね。人に迷惑かけて落ち込んでた割に、被害者が立ち直る前にすんなり立ち直ってるからクエスチョンが止まらなくなる。

【総評】
とても面白かった。見やすいし、声優も豪華だし、ストーリーも若干無理やりだが綺麗に収まっている。本来なら高評価を付けたい所だが、やはり前半の伏線捻じ込み疑惑が拭えない内は、自分にとってはスコアを低くせざるを得ない。とても面白かっただだけに本当に残念だった。
ブリムリー

ブリムリー

ブリムリーさんの鑑賞したアニメ