ぼっちザうぉっちゃー

ぼっち・ざ・ろっく!のぼっちザうぉっちゃーのレビュー・感想・評価

ぼっち・ざ・ろっく!(2022年製作のアニメ)
4.7
はけんましておめでとうございます。
今期は個人的な評価とおおよその下馬評にズレがなかったようで、大優勝でしたね。

他にジャンプ肝煎りの豊富な取り揃えが並び、根強い人気の由緒正しき機動戦士シリーズ最新作も構えるなか、きらら出身のぼっちJKがギター一本で界隈をどよめかせたちまち席巻していく様の、痺れるような爽快感たるや。。。

シンプルにもう面白い。おもしれぇアニメ。
細かい挙動の表情豊かさ、漫画的記号に割り切った身体表現の自由さ、明らかにサイズの合わないとこから無理矢理物を取り出す時のぎゅいーんという海外アニメっぽい表現や、豊富なパロディ、などなど一体作品何個分のアニメーション的面白さが詰まっとるんだというほど法外的に面白い。
キャラクターで言うと特に、伊地知姉妹の1:1:√2か1:2:√3みたいなアホ毛が、面目躍如の大活躍でMVP。そしてまた虹夏の現実離れしたサイドテールを、さり気ない動作でリアルに見せる細かさにも心奪われた。

そういった勢いのあるコミカルな絵だけでなく、空間を広く捉えた俯瞰や、下北の街中の圧倒的雑踏な引き画など、しっかりした実体感の美術も相当に自信があることが窺える仕上がり。
そして極め付きは随所のギャグパートでシャフトみたいな実写おふざけもいれてくるというサービス精神。元々正統派品質なCloverWorksに変態的な演出力が加わってしまってもうヤバい。
ちなみに後藤ひとりcv青山吉能の、可愛らしい声からがなりの効いた声、ほぼ電子音みたいな奇声まで、色々と幅広く発する声帯の自由さも変態的。(ちなみにちなみに山田推しであることはオフレコで。)


そんなこんなで結論的に、クオリティの高い日常系に勝るものは無いなぁなんて思ったりもするのだけれど、普通の日常系と一線を画すのはやはり「バンド」の要素だろう。

バンドシークエンスのその、ステージの照明が淡く空間に光を放射してる雰囲気だったり、音が空気を揺らしてる感じだったり、機材の巧緻さだったり、正直CGか否かの境界が分からぬほど違和の無い滑らかなアニメーションだったり、アクションばりのナメ&フィックスカメラワークだったり、“令和の『けいおん!』”と呼ばれるだけあってそれ自体の凄さはもうかくかくしかじかまるまるうまうま。

このようなクオリティ以上に作品としての価値を高めているのは、複数回行われる演奏シーンその全てにおいて、ぼっちの、結束バンドの、心情やドラマ面を、鮮烈にそして印象的に描き出しているところだと思う。しかし『けいおん!』とは違いそれは決して、「仲良し」を表してはいない。

そんなぼっち自身の奮闘や成長を、独り善がりやただの馴れ合いにさせないのが、他メンバーとの関係性。
その中でも特に今作裏主人公とも言える、喜多の存在は最重要。
この二人は元々代役の縁で繋がっており、そしてぼっち作詞の曲を歌うのは他でもない喜多である。二人は陰と陽であること以上に、お互いの存在に光と影を認め合う対当者として常に作用しあっている。

山田や虹夏にしても、ぼっちが立ち向かうべき「社会」に属する人間としてあり、『けいおん!』と同じ「バンド」という集団に身を寄せながら、ぼっちにとってのそこは「居場所」と言うには、まだあまりに過酷で覚束ない。
それでも後ろに、隣に、人がいるのを感じながら踏ん張って立つステージが、明るい手許の六弦と前髪越しの小景が、押し入れから飛び出した魂のもう一つの「在り処」と呼べるようなものになっていくのを感じた。


今日もまたぼっちは青息吐息で、転がる岩の上に立つ。
ぼっちのロック。ぼっち・ざ・ろっくを、ピンクジャージの中で、青く燃やしながら。