浅野公喜

重戦機エルガイムの浅野公喜のレビュー・感想・評価

重戦機エルガイム(1984年製作のアニメ)
3.7
富野由悠季監督が「Zガンダム」直前に手掛けたブランド王ロイヤル社長風リーゼントや佐村河内守似キャラも登場するロボット物。そのリーゼントキャラ、キャオを演じるのは洋画の吹き替えでも頻繁にその声を聴くホウチュウ・オオツカ。

主人公側に犠牲が少なく、そこまで危機的状況に陥らない&アムとレッシィのヒロイン二人もほぼ最初から主人公・ダバが好き状態なので展開は良くも悪くも安定気味でスリリングな妙味に欠け話数も長く冗長気味なのが少し残念な所ですが、ギャブレー(イエスのベーシスト、クリス・スクワイアがモデル)をはじめクールそうなキャラが大きく表情を崩したりコミカルな所を見せたりと人間味溢れる描写が用意されたり、なんといっても永野護氏が担当したロボット(とキャラクター)のデザインが秀逸。

82年位までのロボットアニメは一つ一つのパーツが大きいロボット、劇画風のキャラ、そしてベテランの低音を得意とする男性ベテランシンガーが主題歌を歌うという70年代の雰囲気が残る作品も目立ちましたが、84年放送の今作はロボットもキャラのデザインどちらもよりシャープでスマートになり、(富野監督が手掛けた前年の「ダンバイン」同様)若手の女性歌手を起用したりと新しい時代を感じさせるもので、特にロボット(今作では通称ヘヴィメタル)は40年近く経った今でも古臭さを感じさせません。ストーリーも、最終的にはある男性を愛してしまったが故に悲劇を迎える女性の性(さが)や若さへの固執やエゴが描かれているようにも感じました。

印象的なエピソードは、ある男が反乱軍の英雄・クロソ将軍を名乗り、それをダバに見破られるものの皆を勇気付ける象徴として将軍としてそのまま君臨することを勧められ、戦士として英雄としての人生を全うする23話「ゼネラル・クロス」と、ギワザとフル・フラットが手を結んだ際に交差して床に砕けるワイングラスや終盤の暗闇に光るライトセイバーが映える40話「フル・フラット」。

筒美京平御大作曲のOP二曲は大好きですし、プレータという癖の強いキャラとヘヴィメタルが登場するOVAもなかなかでした。ちなみに前述の23話のあるシーンでは「DEF LEPPARD&METAL HEALTH(QUIET RIOT)SAIKOO ALCATRAZZ&RICK SPRINGFIELD GOOD」という表示が見えましたが、ギャブレーのモデルの件含めヘヴィメタル&洋楽好きのスタッフが居たのでしょうか(笑)。
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