七沖

NOIRの七沖のレビュー・感想・評価

NOIR(2001年製作のアニメ)
4.7
この作品、昔から大好きだ。
過去の記憶を持たない少女・霧香と家族を抗争で皆殺しにされた過去を持つミレイユの二人が「ノワール」を名乗り、殺し屋家業を請け負いつつ自らのルーツと向き合っていく…というストーリー。

基本的に前半は1話完結型なので、毎回仕事を請け負ってターゲットとの闘いが繰り広げられるわけだが、ジョン・ウー作品を観て育った自分としては、黒服たちがワラワラと出てきてガンファイトするのはめちゃくちゃ馴染みのある展開で、むしろ安心する。
戦いも至って真面目で、色気とは無縁の命のやり取りが行われる。

霧香が人間離れして強く、ミレイユは強いが常識の範疇の強さ。そして霧香は世間知らずで、ミレイユは世渡り上手。という感じで身体面・精神面にそれぞれ逆の差があるのがこの作品を面白くしている。
そこに謎の刺客・クロエ(霧香と同レベルで強い)が接触してきて…という展開から、二人の過去が徐々に明らかになっていく展開に引き込まれた。

だが自分は前半の霧香とミレイユがノワールとして仕事を請け負って海外を転々とするエピソードの方が好きなので、後半のノワールのルーツに関する話はちょっとだけ退屈だった。1話からずっとスポットで描写される懐中時計にまつわる過去のエピソードが明らかになってくるのでつまらないわけではないが…。

美少女二人のガンアクションと聞くと色っぽい感じや華やかなイメージもするが、この作品はずっとシリアスでギャグも色気もなく、色彩もどことなく暗い(笑)。それなのに不思議と見続けることができる独特の雰囲気がある作品で、特に音楽の力が非常に強い。
戦いの時だけでなく日常の音楽も耳に残る。ピアノでしっとりした曲だったり、民族音楽っぽかったりとバリエーションも豊かだ。
作曲した梶浦由記という方の名前はこの作品で覚えた。以降、「Fate/ZERO」「まどかマギカ」「鬼滅の刃」を観るとノワールの音楽の人だ、といつも思ってしまう。

メインの登場キャラは非常に少なく、2クールアニメなのにほぼ4人。
霧香はずっと感情の起伏がないが、時々アドリブで入る「よいしょ」がかわいく、そして日本人らしい。前半のエピソード「迷い猫」「地獄の季節」は特に彼女の性格がよく分かる、このシリーズ屈指の名エピソードだ。
ミレイユの声優さんは三石琴乃さんということで、セーラームーンやエヴァの葛城さんのイメージが強すぎるが、ミレイユのビジュアルにめちゃくちゃ声が合っていた。
クロエは登場するまではOPでしか見たことがなかったので、外見から勝手にハマーン・カーンの声だと思っていたら、思った以上に幼い声でびっくりした。「刺客行」というクロエ主役のエピソード…これが有るか無いがでクロエへの感情移入度がぜんぜん変わってくる良いエピソードだ。
そして敵役のアルテナを演じたのはまさかのTARAKO(ちびまる子ちゃん)…!ぜんぜんまる子と声ちがうじゃん!声優のすごさを感じられる配役だ。

音楽も声優も文句なし。あとはダークで切なげな音楽に身を任せて雰囲気を楽しめるかどうかで評価が分かれそうな作品だ。

なんとサム・ライミ監督による実写化の話が持ち上がったことがあるらしい。
ぜったいやめた方がいい(笑)
七沖

七沖