えむえすぷらす

平家物語のえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

平家物語(2021年製作のアニメ)
5.0
第一話、何回か見直している。レンズ効果や花、表情ではなく所作をクローズアップするところなど随所に山田尚子監督の演出が見て取れる。キャラクター造形は湯浅監督のサイエンスSARU作品的な影のないものが採用されていて従来の山田尚子監督作とは違うのに開始数秒でもう監督の個性、作家性が分かるは流石。

紙に描いたような背景質感は絵巻物的な世界観であったり色々と新規軸もある。その一方で京都アニメーション演出家達が共有してきた片寄せレイアウトといったいった手法も使い最初から全力投球。

悠木碧さん、櫻井孝宏さんら声優陣はこれまでにない演技を披露。これまでの出演作品とは異なる引き出しが開かれてその演技の幅広さを知らしめている。

吉田玲子脚本は制約が少ない時の工夫のされ方は次元が変わってくる。
本作は主人公ともう一人に対称的な特異え能力を与えて我々視聴者の視点を現在進行形の形で担う役割を持たせている。その一方でこの一種の「神話」を未来から歌っていく視点が置かれていてこちらは事が決した世界から過去の出来事に意味付けをしていく。このような視点構成を取って未来から語った物語と主人公の体験を視聴者が共有するという事を同時にやってのけている。

青い小鳥はOPクレジットの漢字の中に潜んでいる。この作品、作画監督はサイエンスSARU作品参加者ながら他の原画、第二原画、動画スタッフには京都アニメーション在籍経験者や協力企業の方がクレジットされている。そして脚本の吉田玲子さん、音楽の牛尾憲輔さんは「聲の形」「リズと青い鳥」で存分に腕を振われた山田尚子監督演出を支える人たちの三度の結集でもある。ここに西屋さんがいないのが本当に残念。
OPに潜んだ青い小鳥達には「リズと青い鳥」にはいた仲間たちへのミッシングフォーメーション的な意味合いもあるかもしれない。

追記:人物関係や言葉は大抵は説明台詞で意味がわかるように展開されますし、いきなり多くの人が出てくるわけではない(基本主人公視点)ので1話ずつ見ていればわかるかなと。清盛の娘、盛子が幼くして摂関家に嫁いでどのような役割を果たす事になるのかあっさり姉の徳子が語ってわかりやすく見せるなどされてます。古川日出男訳の原作の方が用語ハードルは高いかも(こちらはたまに辞典を検索して意味を追って確認しながら読んでます)。