ろく

平家物語のろくのレビュー・感想・評価

平家物語(2021年製作のアニメ)
5.0
まず圧巻である。

アニメなのにというのは僕が古い人間だからだろう。でもあえて言わせてくれ。「アニメなのに」そう言いたくなってしまうくらい僕の心は揺さぶられたんだ。

もともと古川訳の平家物語はすさまじいものだということは知っていた。まず池澤夏樹が日本文学全集を作ったときビブリオマニアは喝采したものだ。僕も何冊かは読んで古典の新訳に度胆を抜かれた。

その中でも古川の平家と角田光代の源氏はすさまじいという噂を。いつか読もう!そう思っている矢先にこのアニメの話。おお、どれどれ。

まず古典好きなんで(まあ職業でもあるのだけど)しっかりと原典のエピソードが入っているのが嬉しい。敦盛などは当たり前だけど白拍子と清盛の展開などほんと細かいとこまでしっかり語られる。それでいてテンポがよく見ている人を飽きさせない。

さらには途中そこそこで語られるリアル平家物語。まさに琵琶法師が語っているのでは、そう思わせる原典の「語り」の面白さ。ああこれぞ面白くてさらには美しい日本語なんだよ。悠木さんが語っているのだろうか。ほんとそこにも拍手。

そして気づいた。教育は何をやっている。これこそが古文の面白さではないか。古文には「語り継がれた」日本の原点なんだよ。それを教育はやれ助動詞だ動詞だ敬語だ、問題を解くだけの意味のない「表向き」の話だけ。ある大臣なぞ「古文なんか意味があるのか」。そもそも勉強を「意味がある」とだけで切り捨てるのが間違っているんじゃないか。勉強をすることによって僕らは「形づくられる」ものなんじゃないのか。そしてそれを教えてくれたのが教育でも参考書でもなく、アニメであること。それは嬉しいと同時にほんとに悔しくもあるんだ。

敦盛の最後から壇ノ浦まで。後半のシークエンスはほんと目が離せない。多くの人に見てほしい。そして多くの人に古文を感じて欲しい。日本が1000年の長きにわたって語り継いだ言葉の魔力を。

権力が自己を破滅させる。常に周りを翻弄するものは権力者だ。それは今も昔も。ウクライナの情勢も安陪首相の森友問題も、トランプの扇動も。

「おごれる人も久しからず」は今でも大切な言葉なんだよ。
ろく

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