ぐり

平家物語のぐりのレビュー・感想・評価

平家物語(2021年製作のアニメ)
4.0
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとえに風の前の塵に同じ。

平家物語のこの冒頭部分、中学のとき授業で暗唱"させられた"なあ。あのときは話の内容なんてぶっちゃけどうでもよくて、ただ暗唱さえできればそれでよかった。だから、もしこのアニメと出会っていなければ、改めてこの冒頭部分を読んだところで、"暗唱させられた文"としか思えないままだったろうなと思う。

このアニメを観終えた今、改めてこの冒頭部分を音読してみると、アニメを通して出会えた平家一族の彼らが頭に浮かぶ。壇ノ浦の戦いで、平家の名を捨てずに次々と入水していった彼らを、私は誇りに思う。平家一族として生まれ、栄華を極め、滅びるその瞬間まで平家として生き抜いた彼らの生き様は、本当に美しいものでした。

余談ですが、私は小学生の頃からずっと歴史が嫌いでした。高2のとき日本史を選択してもそれは変わらず…(笑)暗記が苦手なのもあったんですが、1番は歴史に興味が湧かなかったからなんですよね。(学ぶことが多いので仕方なかったんですが)とにかく時代がどんどん過ぎるので、追いつけなかったんですよ。誰かが台頭したと思ったら戦いが起きて、死んで(滅びて)、また誰かが台頭したと思ったら戦いが起きて、死んで(滅びて)の繰り返しで、それらの事実のみを淡々と覚えることに何も面白みも感じられず…なんとか赤点は免れましたが…って感じで(笑)

そんな歴史嫌いの私でも、今作はとても楽しめました。食べやすいアニメでしたね。日本史の授業で習った話のはずなのに、凄く面白かったです。それは今作が、平家一族のみに焦点を当てて、単に平家が絡む事実を伝えるのではなく、事実よりも平家の生き様をメインに伝えているからだと思う。今作を通して彼らを見て、聞いて、知って。今までは平家のことを"源氏に滅ぼされた一族"としか認識していませんでしたから、とても興味深く鑑賞させていただきました。

資盛「強いほうにつかねば自分が痛い思いをする」
清経「だとすれば、誠実さや実直さや恩義というものは、意味をなさぬではありませぬか」
資盛「我ら平家に、それがあったと?」

平安時代というのは激動の時代でしたね。私は平家に関する知識がまるっきりないので、完全に平清盛が元凶としか思えませんでした。平家一族は自分の置かれた立場から簡単には逃れられず、苦しみ、もがき。戦乱の中生まれた温かい人情は、報われない魂とともに海に沈んでいく。辛かった。けれど、平家一族というだけで苦しんだ彼らが、最期は平家のためにと、自らの命を賭け海に飛び込んでいく姿に、私は美しさを覚えたのです。極悪非道の行為で世から憎まれていた平家一族とは、いったいどんな一族だったのか。彼らの中にも温かい人情が少なからずあったことなんて、源氏や源氏についた者たちは全く想像できなかっただろう。平氏でも源氏でも、それぞれが誇りを持って生きている。それのなんて美しいこと。自分たちが平家であることに誇りを持ち、最後まで平家を守った彼らを、私はたたえたい。そして、そんな彼らを語り継いでくれた琵琶法師たちは、情の温かい人たちだったんだなと思う。祈り、語り継ぐことで、彼らの魂はきっと報われる。最終話を観終えた朝は雲ひとつない青空で、私は空を仰ぎ、平家一族の魂に祈りを込めました。

PS
追加で良かったところを少し殴り書き!未来が見える目を持つ主人公という設定がまず面白い!時々聴こえる琵琶の音が空気をピリッとさせていて良かった!単純に歴史の勉強としても面白かった!キャラは重盛が特に好きでした🥲プロの声優しかいなくて全員最高でした!義経役の梶裕貴が個人的に大優勝でした!最後に、羊文学の主題歌「光るとき」とっても大好きな1曲になりました☀️

️📝2022年6月10日〜2022年6月11日
ぐり

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