このレビューはネタバレを含みます
全11話。
『平家物語』が如何様にして語り継がれるに至ったか、を描いた話。
未来が視える少女・びわが主人公として据えられている本作ですが、このびわがかなり異色な立ち位置のキャラクターなんですよね。
すごくメタい話ですが、びわは山田尚子監督がとある役割を持たせて生み出された存在なんですよ。
その役割とは、すなわち『観測者』。びわに与えられた主命は「平氏の人たちと力を合わせて頑張りなさ〜い✊」ではなく「平氏の人たちの動向を観察してきなさ〜い🫵」である。
そんなびわにはいくつかの『観測者ルール』が適用されおり。
【①対象や場所を問わず未来が視える】
未来が視える"権利"というよりは未来を視なければならない"義務"に近い。
平氏の行く末を見届けるのが観測者としての命題なので、本人の意思に関係なく、然るべきタイミングで身体が勝手に片目を塞ぐのだろうなぁと思った。
【②歳を取らない】
観測者だからね。歴史上の人物と同等の時間軸を生きているわけではない。
【③平家の生死に干渉できない】
びわは「なにもできない」と泣いていたけど、観測者が歴史を変えるわけにはいかないので残念ながら当然なのである……。
【④びわの生死が脅かされない】
あれだけ平氏の近くにいながら一度たりともびわ自身に危険が及ばなかったのは、観測者としてすでに歴史の流れからはじき出されているからなんだろうな。
壇ノ浦で平氏が次々と入水するシーンでさえ「わしも飛び込んだ方がいいのか」的な恩義の葛藤すらないもんな。なんなら源氏と一緒に徳子助けてたもんな。そっち側なんだ?
最終的にびわは盲目の琵琶奏者になったようだけども、視たくないものから目を背ける救いでもあるのかなと思うと切ない存在ですよね。
我々が平家物語をエンタメとして消費しようとしたばっかりに……すまねぇ……。
p.s.声優陣が軒並み豪華だったけど、源義経(cv梶裕貴)で「勝てねえよ!」と思った。主人公ド真ん中すぎる。