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その着せ替え人形は恋をするの都部のレビュー・感想・評価

その着せ替え人形は恋をする(2022年製作のアニメ)
4.0
端的に面白かった。見た目はギャルだがオタク趣味に傾倒する喜多川のキャラクター性の愉快さを作品としての柔らかな切り出しとしながら、雛人形とコスプレという好きな物を形作るという共通項を帯びた趣味を持つ二人が惹かれていく様を丁寧な筆致で描写していて、高水準な作画も併せて普遍的な『好き』という感情を取り扱った万人向けのアニメーションとしての完成度が高い。

コスプレを通した自己実現の尊さをこれでもかと語る一方で、やがて喜多川が恋愛的な意味合いで五条に惹かれ一喜一憂する姿は非常に可愛らしく、五条当人のチャーミングな男子像がこれを爽やかに引き立てられているのもよく考えられているように思った。

『こんな男子高校生いねぇよ!』と切って捨てることもたしかに出来るかもしれないが、一つの愛好する事柄への真摯さだとか現実と地続きの等身大の男子っぽさが絶妙な愛らしさとして機能しており、読者や観客からヒロインである喜多川以上に好感を抱くに容易い造形をしているのでかように冷たく突き放せるそれでもないのが大きい。

先輩コスプレイヤーであるじゅじゅ姉妹との交流をエピソードの差し色──同じ趣味を共有する相手とコスプレをする行為の尊さ──にとしながら、一風変わった青春を謳歌する二人の透明度の高い物語として構成されるエピソード群の組み方も感心させられる。

年相応とも言える若干のエロチシズムも垣間見えるが、序盤のそれを除けば高校生二人の可愛らしい摩擦としてそれらは配置されている印象で悪印象はさほど抱かなかった。

そして本作の最も優れてる点は何よりも喜多川海夢が可愛いということで、アニメ映えするショットをしっかり綺麗な作画で見せており、耳に馴染む声優 直田姫奈の演技が彼女のチャームさを引き立てているためマジでクソ可愛かったですね……。

今年春放送していた作品で、見よう見ようと後回しにしていたのだけれどなかなか面白かったので、制作決定した2期は是非とも地上波で見たいものだ。
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