めしいらず

あらいぐまラスカルのめしいらずのレビュー・感想・評価

あらいぐまラスカル(1977年製作のアニメ)
4.2
とても誠実な物語だった。ここに描かれているものにはほとんど作り事めいた嘘が感じられない。あり得ないような大悲劇が次々に主人公に降りかかり涙を誘ったり、誰もが憎んでしまうような大悪人が出てきて主人公を虐げたりと、そんな如何にも創作物語風な味付けで安易に見る者の感情に訴えかけるような部分が全然ないのだ。ここに描かれている出来事は誰の人生にも起こり得るごくごく平凡なものであるし、概ね善人ではありつつも時に中途半端だったり自分勝手だったり悪かったりもする人々の様々な側面も我々の日常のそれと何ら変わりない。日々起こるありふれた問題を一話ごとに区切ってごく簡単に解決して物語上永久に済ませてしまうようなところもなく、一つの問題解決には時間がかかるし、いつかのトラブルが後々になってまた顔を出したりする。実人生をこんなに正確に切り取ったTVアニメは、高畑作品以外では本作くらいしか知らない。20世紀初頭の時代の空気や風俗も丁寧に描かれている。たった一つ惜しまれるのは最終回、主人公スターリングとあらいぐまラスカルが一緒に過ごす最後の時間の背景にずっと流れている歌がスターリングの心情を感傷的に代弁するようで些か五月蝿く感じられるところ。そこは静かに描いて欲しかった。とは言いつつも改めて鑑賞できて本当に良かった。ギャオさん、ありがとう。
再鑑賞。
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