いのしん

リコリス・リコイルのいのしんのネタバレレビュー・内容・結末

リコリス・リコイル(2022年製作のアニメ)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

千束もたきなも可愛いのに、銃を持たせたら無敵というギャップが良い。面白い設定だな。とはいえストーリーは淡々と任務をこなしていく印象で、2話時点で大きな展開はなく、また、登場人物が敵なのか味方なのか誰が誰だか分からない。
3話、千束がたきなにかける言葉が感動的。今はまだ我慢して次に進む時、あの時命令を無視して撃っていなかったら今こうして私たちは会えていない、と。仕事で理不尽な事や納得できない事があって、左遷されて、今は辛い境遇にいたとしても、きっとチャンスはやってくる。そう希望を持たせる言葉をかける千束、なんて素敵なのだろう。「私は君と会えて嬉しい嬉しい」と素直に感情を表現できるし、「今はたきなに酷いことを言ったやつらをぶちのめしたいので、ちょっと行ってきますよ」と他人の事を思って仇を取る行動力、勇気。かっこよすぎないか。生意気なだけでなく、他のリコリスと比較して圧倒的な技量も持ち合わせている。故に影響力がある。実力がある者は、人として強いのだ。
5話、相変わらず千束が強い。近づきながら銃を乱射し、敵の弾に一発も当たらずに腹パンを食らわせるなんてかっこよすぎ。そんな千束は実は人工心臓という秘密が明かされる。どんな過去を歩んできたのか、徐々に明らかになっていくのだろう。
9話、千束の人工心臓が狙われ余命2ヶ月に。一方たきなにはDA復帰の辞令が出る。近づく別れ、最後のデート。千束の命を狙った看護師へ復讐するのだと殺意を露わにするたきなに対し、元々長くない命だったし、となだめる千束。泣ける。千束の命を助けたアラン機関の吉松が、リコリスとしての使命を全うするよう期待を込めて救ったのに、人殺しの任務を避ける千束は役立たずと判断され、消されてしまうのだろうか。とはいえ、命を救う吉松とミカ、小さい頃の千束のやりとりは感動的。
ラスト3話くらいはずっと旧電波塔や延空木での戦闘シーン。真島と千束が仲良く撃ち合って、疲れたら休んで、たきなが本気で真島を殺そうとして、それを千束がなだめて止めて、ミカが吉松を殺して人工心臓を奪ったから手術ができて千束は延命して、宮古島でひっそり暮らす千束をクルミが突きとめてたきなが連れ戻して、喫茶リコリコが再開して、いろいろあってハッピーエンド。
良い作品だった。誰にも劣らないすごい才能を持っている、だから期待される。でも周りからの期待は自分のやりたい事ではない。「やりたいこと最優先」のポリシーに反する。そんな時、それでも周りの期待に応えるのか、自分の意思を貫くのか。それがこの作品の一つの大きなテーマだと感じる。千束は後者だった。もし人殺しの使命があるとミカから聞かされていたら、その使命を全うしながら吉松やミカに愚痴や文句を言いながら生きていたに違いない、だからその事実を知らなくて良かった、と作中で千束がミカに話すシーンがある。負い目を感じるミカに千束は優しく声をかけるのである。なんてできた子だろう。17歳の少女が立派すぎる。千束の言動全てが大人だなあ、と全話観終わって振り返りながら思う。