現在第21話まで視聴。残り3話というところで自分はリタイアを決めた。
今年の1月にシーズン1を終えた時の感想は、なかなかに好印象だった。
戦争状況下における兵器としての役割を与えられているガンダムという存在を誇示しながら、主人公スレッタがそれを“家族”とする。
学園内の友達トラブルや、子供達には理解できない大人達の論理。
そこに必ず潜む、世界の残酷な状況。
一見すると女の子同士の微妙な関係性や学園ドタバタだが、話が進むにつれて、そうではない隠された闇が子供達にも降りかかってくる。
血が流れない決闘で物事を決めながら、モビルスーツの戦術、広告、販売の教育をするアスティカシア高等専門学校。
見逃されがちだが、所謂これは子供達に戦争教育をしていることと同じである。
おまけに宇宙と地球の超格差社会からなる差別や貧困から脱却しようと、あらゆる手段でこの学園に入学しようとしている状況がある。
これはまさしく資本主義社会のディストピア。
戦争状況を維持することで、学園の運営をしているベネリットグループの財政を保つ。学園はグループの維持存続のための教育機関。
その“腐れきった”大人達の世界の中で、スレッタやミオリネが見出す「命を救うためのガンダム(GUND)」が、この世界で唯一輝いた光だったが、そんな夢想は大人たちが向き合っている複雑怪奇な社会の壁に太刀打ちできるはずもなく、
戦争という状況をもって痛感することになった。
シーズン1で描かれたのは、子供達しか見出せない純粋無垢な希望が、大人達、ひいては社会によって打ち砕かれてしまう残酷さが描かれた。
その真摯かつ、嫌な言い方をすれば当然の結果となった物語の一旦の終結を経て始まったシーズン2は、序盤からこの世界の格差の被害者の声を描いた悲痛な物語から始まった。
しかし第16話から妙な雰囲気が漂い始める。
地球でアーシアンが受けている迫害を間近で受けて目撃したグエルが、たった一話で宇宙に帰還。
地球で少しばかり交流が出来たオルコットとのやり取りはほぼ無かったと言っていい。
おまけに軌道エレベータに関する説明もなく、16話で平気な顔をして帰ってきている。あまつさえ行方不明の会社CEOの息子だというのにフードを被った見るからに怪しい出立ち。
地球と宇宙を結ぶ玄関口ならば、不法移民等を取り締まるチェック体制があっても良いはずにも関わらずだ。
そういった、やたらと描写を省く急ぎ足のような展開に抱いた違和感が確実になったのは第17話の最後にミオリネがスレッタに事実上の絶交を言い渡したところだ。
わざわざ来る必要もない決闘の場まで出向いて、スレッタが渡した人形を返却してまで距離を取ろうとしたミオリネだが、
スレッタを巻き込まないようにするためとはいえ、既に決闘の勝敗で関係性の破棄が確定しているわけだから、何も言わずにただ黙って離れればいいこと。わざわざ決闘の場まで来て言わなくてもいい話。
実際、ミオリネは社長業との兼任で第10話でスレッタとの疎遠が起きており、グエルとの会社経営をしていれば自ずと距離は離せたはずである。
ミオリネの最後の行動自体、不必要な描写と言わざる得ない。
製作はなぜこんなことをするのかと考えた時、ようは残り話数の都合とグリフハンガー要素をふんだんに取り入れたいがためだ。
第18話になると、これまでの全ての経緯を全て台詞で解説したり、第20話になるとペトラやノレアの台詞回しが近代稀に見る雑なフリとして描かれ、
その展開ももはや必要なのかどうかもわからない。
第21話ではついにラウダが意味不明な怒りの矛先を向け始め、まったくもってペトラの境遇がこのためだけに存在しているようなもの。いや、ラウダが不必要に怒ることそのものが不要なのでただのクリフハンガー要素でしかない。
ついにキャラクター達が製作の駒になった。
既にTwitterでは「誰が死ぬか」の大喜利が始まっており、あまつさえ第12話で死を受け入れるか否かのシビアなものを描いたものとは程遠い、
“誰を殺せば面白いか”に舵が向いている。
家父長制や女性のトロフィー発言、格差、貧困、復讐のどれもが、物語終盤の今、ただのファッションに成り下がっている。
クワイエットゼロによる反乱がペイル社が把握した経緯も描かれず、
その報せを聞いても尚、無策に突っ込む議会連合の部隊。
グエルとシャディクの両方ではなく、シャディクのみが拘束されている不自然さ。議会連合が介入してきたのに何故グエルは拘束されないのかわからない。
何事もなく宇宙に帰って来れたミオリネといったように、描くべきところが描かれない。
20話で怒号した5号も、なんのいざこざもなくスレッタ達と合流。もはやキャラクターの感情も意味がわからない。
既に物語の破綻は起きている。
もうその修復する余裕もないぐらい残り話数も無いだろう。
何故こうなったのか反省して、製作陣はさっさと次の現場で腕を振るってくれ。それがこの作品にとって一番の祝福になる。