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機動戦士ガンダム 水星の魔女 第2クールのogagawawaのレビュー・感想・評価

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『機動戦士ガンダム 水星の魔女』

僕にとっては初めてのガンダムシリーズだったけど、いやーーー! 面白かった!たしかに、こういうシリーズ作品に関しては、ファンだとどうしても過去作との比較目線がでてしまうかとは思うし、完全新規ゆえの初めて補正はあるかもしれないけど、本当に熱中して駆け抜けた3ヶ月だった。ガンダムも俺も駆っていたよ。日曜5時に間に合うように毎週帰ったし、ガンプラも初めて買っちゃたもんね! 生活に影響を与えたという点では、間違いなく今期の優勝だと思う。ひとは初めて観たガンダムを親だと思う習性があると聞いているので、僕は水星の魔女のことをきっと忘れない。

そもそも何故ガンダム未履修の僕が本作をチェックしようかと思ったのかといえば、1話でTwitterが「ウテナだ」「学園、決闘、花嫁」「これはウテナ」と実しやかに騒いで生まれたビッグウェーブを前に、初ガンダムはここしかないと飛び乗ったからですね。ただ本作を最後までみると、ウテナを入口にして、出口はピングドラムだったような気もしている。(俺は何かと理由をつけてピンドラを思い出したい男)親世代の呪いに、子供が向き合う物語……。ただこの呪いも厄介なもので、相手を想っていても呪いになることはあるし、呪いだったとしてもそこに想いはあるんですよね。そして、そんな想いだけではどうにもならない現実というのもあるし、現状を動かす最初の一歩は想いであるのも事実なわけで……

水星の魔女の登場人物は、たぶん意図的にわかりやすい立ち位置(初期位置?)に配置されている印象はあって、雑な言い方になるけどテンプレ的流れも汲みながら、ものすごい推進力で物語を進めていく。というか、お約束ベースで展開するから、視聴者サイドが過去の経験から勝手にヒヤヒヤしたりワクワクしたりできる剛腕采配だし、だからこそ、えっちょっと聞いてないよォ局面で一喜一憂してしまう。正直に言えば、スピード感ゆえによくわからないところがなかったとは言わないし、完結してもあれどういうこと? という点もあるっちゃある。だけど、この満足感はなんなんだろうな! もう『水星の魔女』に愛着を持たされてしまったから、君とか君が、生きているだけで、それだけで満たされているんだよな!

水星から編入してきたお母さんが大好きな主人公スレッタも、その高潔な意志で道を心を切り拓くミオリネも、道明寺かと思いきや完全に愛されキャラになったグエル先輩も、こんな役に花江夏樹?いやこれは完全に花江夏樹ィ!になったエランくんも、大人になるしかなくて愛が重いシャディクも、地球寮も懺悔室も、宇宙に生きるみんなみんな大好きになるくらい、大好きになれなくても憎めねぇなとは思えるくらいには作劇の配慮が行き届いている。名言、パワーワード、そういうとこやぞムーヴ。毎話終わるたびに、Twitterでも登場人物の未来を案じ、考察、妄想、願望が垂れ流しになる盛り上がりは23話まで続いた。24話もそういう話をしたかったぞイーロンマスク?

そして、どの人物にも、わかる部分、わからない部分、わかっちゃうな…な部分があり、そんな不完全さも憎めない要因のひとつだったように思う。子供も大人も、それぞれの立場や状況のなかで正しくあれたり、間違えたりする。無意識に誰かを傷つけることもある。自分が起こした行動の結末は、良いものも悪いものも、他者の影響があったとしても、自分で決めたものは取り戻せない。今、すべきことがわかっても、過去の傷や痛みがそれを許さない世界で、ひとは何をすべきなのか。その問いかけを胸に、学園や親という箱庭から飛び出した彼女たちが、自らに向き合い、何かを得るために、何も得られないかもしれないとしても、できることをするべく踏み出していく。モラトリアムの終焉、そして自立という意味で、正当に青春モノだった。

たしかに諸々の問題は解決していない部分はあるし、今後に暗い影を落としている描写もある。だけど、現実と地続きで未だに蔓延る問題を描いている以上、安易な解決を提示するほうが不誠実な気もする。そして、問題に向き合い、対話を止めないことが、いつか世界を変える一歩になるのだというのが、ポスタービジュアル含め、誰かに手を伸ばし続ける作品からのアンサーだと思う。その手がきっと未来を変えていくし、伸ばし続けることをやめてはいけないんだ。違う僕たちが、同じこの星で生まれ、この世界で生き続けるために、その全てに愛してると言えるように……って、愛してるじゃやっぱりピンドラじゃねぇか! 今作で最後に送るべき言葉はひとつ。消えない過去と、踏み出した今と、手を伸ばした未来へ愛を込めて、

「目一杯の祝福を君に」
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