このレビューはネタバレを含みます
ガンダム歴は宇宙世紀モノは殆ど観ていてナラティブだけ全く知らない。アナザーはスパロボからの知識くらい。
『祝福』効果で終わった直後は気持ち良かったのだが、それまでの過程で気になった事と思い返してみるとちょっとな…と感じる部分がいくつかあるのでそれらをあげつらってみる。
以下、批判的な感想になるので祝福感を損ねたくない人は閉じてくらさい。
一期同様、中盤は面白かった。スレッタをプロスペラの呪縛から解き放つ為にスレッタからホルダーの座を奪う展開も、仲直りする事が分かりきった展開ではあるものの二人の関係性を深めるために必要な部分だし、1クール目の虚無な関係性よりはずっと良い。
MSについて。
カタルシスを感じられるような活躍を見せる場面がひとつもなかったのは結構厳しい。
エアリアルとキャリバーンくらいしか目立ってないし、キャリバーンも合体したかと思ったらすぐ消えて全然活躍しなかったな。
ガンダムを兵器としてではなく人の未来の為に使うという理念を体現するかたちで、コロニーレーザーの無力化をラストに持ってくるのは分かるんだけど、それにしても道中もう少し盛り上がる戦闘が欲しかったな…ラスボスすらいないし。
シュバルゼッテは個人的に好きな機体だけど、ラウダとの戦闘が別に要らないんだよなあ。少なくともあのタイミングでやる事じゃないし、戦場に自己都合で介入してきて攻撃してきたくせに仲間面しつつ「許したわけじゃない」ってなんやこいつ!お前だけ歩いて帰れ。
まあでも富野式ガンダムの行き着く所は月光蝶みたいなカタストロフだし、「ガンダムだからって兵器の枠に収めなくてもいいじゃない」という方針を示し解釈を広げた事自体には意義があったのかもしれない。…でもMS戦観たいからガンダム観てるとこあるしなーどっちにせよ最終バトルはラウダの出る幕じゃないしなうーむ。
今作には“罪の赦し”みたいなテーゼを感じるんだけど、大人達が自分らの罪を子供達におっ被せて退場して、最終的に子供達はそれを自分の罪として抱え込んでんのヤバくないか。シャディクはまあ一線超えてると言えるけど、他が無罪放免はおかしくない?シャディクの「さよなら」は極刑を覚悟した上での言葉だろう。お前んとこの隊員なんかみんな憂いの無い顔してるぞ。ペイル社の四人が仲良く隠居してるのも胸糞だし、少なくともプロスペラが何の贖罪もせず、スレッタ達もそれを受け入れているのは何?一人に全部押し付けてトモニイキルカラ”目一杯の祝福を君に”デデデッ〜♫じゃないのよ。
「あなた方は学生なんです。責任は大人に取らせなさい」が完全に口だけになってしまった。
プロスペラについて。
洗脳漬けにして人殺しまでさせといて「スレッタは自由に生きていいのよね」じゃないねん。プロスペラにも母親としての情が残ってましたみたいな見せ方してるけど、これまでのことがあるからエゴにしか感じない。これを愛情として描いているとしたらクソヤバい。ボンドルドか。
エリクトが「君”たち”は僕の遺伝子から作られたリプリチャイルドってことだよ」って言ってたから、オリジナルのエリクトとスレッタの間に11人のカヴンの子がいるはずなんだけど、プロスペラがそいつらに特に触れる事なく終わるのも怖い。
そしてあんなに依存しきっていた母親から捨てられたのにめちゃめちゃ立ち直りが早いスレッタ。スレッタを主人公とした物語において”洗脳からの解放”はメインテーマともいえるところなので、もうちょっと違和感なく丁寧に描いて欲しかった。
ラストの和解(?)に至るまでのシーンも結局亡くなった夫やエリクトが出て来て説得するまで強行しようとしやがったし、スレッタの活躍味が薄い。
セセリアについて。
俺も爪塗りたいって事しか考えられない。
ストーリーについて。
散々言われてることだろうけど、だいぶ駆け足だったね。主要スタッフがTwitterで制作期間のカツカツさを愚痴ってたから、脚本の皺寄せではみたいな少々下衆な勘繰りをする意見も見かけたけど、最終的にプロスペラとスレッタに主軸を絞って(上述したような不満点はあれど)24話でキッパリ終わらせたのは誠実だと思う。「続きは映画で!」みたいなパターンより全然誠実。
ただハイテンポな作品は好きだけど、ひとりひとりのキャラの掘り下げがだいぶ甘かったように思う。W主人公的な感じでやってきたんだから、もう少しミオリネとデリング側を描いて欲しかった。
あと「結局何の話!?水星は!?」みたいな気持ちも若干ある。戦争が起こらないのはまあいいとしても、だいぶ小規模なところに収まってしまった。
スペアシ問題もミオリネが地球に資金全ぶっぱしたところで結局宇宙に吸い上げられているようで、構造は何も変わっていない。
宇宙議会連合の影に隠れて現在も活動しているオックスアースについても特に触れられることなく終わった。
エアリアルとルブリスの関係は?
レンブラン家の過去に何があったのか?
匂わせるだけ匂わせて特に何も進展しなかった要素が多く、多くを語らない魅せ方というよりは決定的な解答を誤魔化して、都合の良い解釈を視聴者に委ねているように感じてしまった。
デリングとミオリネ間で起こる”父への反逆”、プロスペラとスレッタ間で起こる“母からの解放”など、時流に乗った物語を序盤で示しながらも最終的にほぼ潰えてしまったのも非常に残念。
スレッタとミオリネの関係性について。
1期の時点で関係を築くまでの描写が薄すぎると思ってたところへのキラートマトENDだったので「どうやって関係性の修復をはかるか分からんけどその過程で同時に仲を深めていくんやな」と期待していたのに別にイベントとかもなくめちゃめちゃあっさり解決した。そこもうちょい描くべきだろ。スレッタは4号LOVEだし、ミオリネはシャディクのこと現在進行形で全然引きずってるし、こいつら何で結婚してんの?個人的に百合に過反応する人は苦手寄りではあるけど伏黒恵のように百合の解釈を広げて“女性同士の関係性”すべてを百合とするなら、本作はそれも魅力のひとつとして謳っていたようなものなのでそれでええんか?と思わんでもない。もし4号生きてたら、もしシャディクの代わりにプロスペラがぶち込まれてたらって…スレミオのどちらにもフラグ立てておきながら何も発展しなかったグエルくんはどう思うんだろう。