味噌汁

STEINS;GATEの味噌汁のレビュー・感想・評価

STEINS;GATE(2011年製作のアニメ)
5.0
 偶然にも過去に干渉できる〈Dメール〉を開発した岡部倫太郎が、天才科学者牧瀬紅莉栖の死をきっかけに世界に渦巻く陰謀に巻き込まれるSF作品。09年に5pb.から発売された同タイトルの家庭用ゲームソフトが原作。

 確定したヒロインの死を救う物語やエピローグのあのシーンなどはもろに05年公開の映画『バタフライ・エフェクト』と酷似(オマージュ)した展開になっている。本作と前述した映画との違いとして挙げられるのはふんだんに盛り込まれた〈オタク要素〉である。オタク街としての盛り上がりが落ち着きを見せつつある10年の秋葉原を舞台としているが、厨二病と呼ばれる思春期特有の言動を模した主人公の言動やインターネット掲示板〈2ちゃんねる〉をオマージュした発言などはネット文化黎明期であった08年頃の様相に近い。登場人物もそういったアングラな要素から着想を得ているため『バタフライ・エフェクト』よりかは受け入れづらい口調や言動が目立つ(アニメと実写の違いも大きいとは思うが)。そのため肝心のストーリーをよく理解できずに視聴を中断してしまうファンも多いのは残念なところ。

 Dメールを開発したことで付随した能力〈運命探知の魔眼(リーディング・シュタイナー)〉を得た岡部が世界を元に戻すためにタイムリープを繰り返すのだが、そこで生じる葛藤が本作でのキーポイント。無限にやり直せる便利な能力とは裏腹に主人公やその他人物のささいな言動により別の世界に変貌してしまう恐怖が演出されている。確定してしまっている未来を止められない虚しさ、自分だけが結末を知っている苦しさなど肉体的には健康でも心に深刻なダメージを負いながら足掻く岡部の姿には心打たれる。主題歌『Hacking to the Gate』の歌詞にもある通り過去や未来しか存在していなく、失った現在を取り戻すために動く岡部倫太郎もとい鳳凰院凶真の有志を拝んでいただきたい。
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