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ONI ~ 神々山のおなりの映画初心者のネタバレレビュー・内容・結末

ONI ~ 神々山のおなり(2022年製作のアニメ)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

堤大介監督作品。見てきた堤作品の中で1番良かった。傑作です。堤さんと言えば、「ダムキーパー」でアカデミー賞受賞、親戚の宮崎駿も参加したスケッチトラベル本の企画など多岐に渡る活躍をされています。制作体制もあって寡作な監督で非常に楽しみにしていました。「境界に存在するキャラクター」を描いていました。

自分が思う堤作品の良さ。堤さん自身ピクサー出身ということでかなりピクサー色が強い作家の1人だと思います。具体的には、オリジナルは人間の人生経験から生まれるもの、色と光はストーリーを語るという2つの考え方。この2つの考え方を徹底的に盛り込んでいるのが堤さんの作品と思います。ちなみに、ピクサーの色好きは「The Color of Pixar」というマニアックな本を見ればわかると思います。

本作でも上記2つの考え方に基づいて作られた作品に感じました。堤さんは日本出身ですがアメリカで活躍されています、つまり「境界に存在する」人間です。本作では「日本にいるけど黒人」、「神々山にいるけど人間」と2人の境界に存在する人間、この2人の融和を通して、ONIと神々の融和を描いていると思いました。堤さんの人生経験で境界に存在しているからこ思いが作品にあると感じました。そして、光と色。誰しもが思うほど美麗かつ繊細な光の表現。それは幸福なシーンだけでなく悲哀や怒り、決意など様々なシーンに適切な光と色が配置されていました。そのため、言葉がわからない小さな子供でも理解できるように作られていると感じて良かったです。

...と、まぁかなり堅苦しく書いてしまいましたが、本作わかりやすく良い作品なんですよね。脚本、アニメーション、映像、演出、音楽がどれもクオリティが高いと思いました。若干思うところはありますがそれは後述します。全4話、計160分ほどの作品でこのクオリティが続くため、極上。

脚本。岡田さんが脚本担当ですがあまり岡田さんの色が出ておらず、だいぶ堤さんの色が出ていたと思います。コミカルなやり取りがハイテンポで進んでいき非常に朗らか。特に、親子2人の他愛もない生活が良いです。もちろん、狂言回しなキャラクターの河童の存在も良かったです。序盤は和風物語調に進み、次第に違和感を増やし、人間が登場、そこからテーマが浮き上がる構造。かなり王道な作りですが、映像や演出が相まってさほど気になりませんでした。

アニメーション。PV段階だとかなりカクカクした動きで大丈夫かなと思いましたが、コミカルな箇所は3コマか4コマ、それ以外は2コマか3コマぐらいの動きだったと思います。コミカルなところでコマ数を減らすのは、日本だと今石監督を代表するようにやられていたため違和感はありませんでした。パカパカ動くとスピードが出てよりコミカルさが増すと思います。

映像。光と色、そして構図が良かったです。光と色は重要なシーンはどれもカラーボードで事前に作られたのでしょう。構図に関して言うと、キャラクターの頭身が低いためか、16:9の画面に対してキャラのおさまりがすこぶる良い。クリエイター達が良く16:9は良くないと言うのですが、キャラクターの頭身に関係しているのではないかと思いました。この作品を通して得られた発見として大きい。

演出。温度のあるシーンから少し冷めるシーンへの移行がだいぶ良かったです。それらの移行の代表格が、「となりのトトロ」の雨の中バスを待つシーンが代表的です。その遺伝子がこの作品にもあったと思います。その移行がうまいため、変に尺を使っていないことでテンポの良さがグンと上がっている気がしました。音を使った演出として1話と3話の締めの音の工夫が良かったです。

音楽。本作、かなり音楽がかかるタイプの作品だと思います。そのためかライトな作品に感じて見やすい。音楽が良かったところは満場一致で1話のラストシーンでしょう。あれがメインテーマだと思うのですが、あの1話の終わりには痺れました。

ここからは少し残念なところ。やっぱり思うのがミスリーディングが強引だということ。「ONI」の正体は「人間」と思わせて「よくわからないもの」と転換しているところ。テーマとして視野を広げた見方になるべきというものですが、物語として若干強引と言いますか。人間が環境汚染している描写があまりに「ONI」の正体が「人間」という印象を強くしすぎている気がしました。また、「影」の存在。海外ではわかりませんが日本の作品では「影との闘い」はよくあり、そっちにいっちゃうか~となってしまいました、王道というよりテンプレと言いますか。そこは残念です。

【総評】
傑作です。1話の終わりが1番テンション上がったのは事実ですが、それ以降も独自性があり映像や演出等々秀でたところが多い作品でした。実際に尺をさほど感じずに1話1話体感時間が全然無かった。かなり好きな作品だと思います。ありがとう堤大介。
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