名無しののんべぇ

サイバーパンク エッジランナーズの名無しののんべぇのレビュー・感想・評価

4.8
インプラントを巡って闇組織との抗争を繰り広げる、SFフィクション。

第一話の完璧な幕開けでスタートし、最終話で最高到達点を見事に叩き出し、完璧に幕が降りていく。
ここ数年で一番脳が揺らされた作品。

違法な取引が頻発するナイトシティを舞台としたアンダーグラウンドな雰囲気に月への希望というセンチメンタルな描写鋭く突き刺さる。
最初の1、2話を観た時は心身ともにテクノロジーに身を捧げる少年の生き様をシニカルに表現する作品だと思ったが、進むうちにどうやら違うぞと。
人智を超えた物質が持つ中毒性は確かに表現されているが、それは愚かとはむしろ真裏にある他者との関わり合いの中で確立される力強さを芯に据える。デイビットドがインプラントに侵されれば侵されるほど人間であるからこその力強さが浮き上がる。

未来的な世界と貧困者のリベンジは「レディプレイヤー1」が思い出されたが、大きく異なるのは、今作ではこの未来的な世界がまさに現実であり、日常であること。ルーシーはすぐ目の前にいるし、そこで光っている月は確かに存在する。
SFではあるがそこで起きているのは現実的なサイエンス。だからこそデイビッドの夢が「ルーシーの夢が叶うこと」になっていったことに意味があるんじゃないかな。

月背景のあのシーンと最後のルーシーの表情よ、、、。
あんなに望んでいた夢以上に大事にすべきものが自分も気づかないうちにできていて、他人の夢に生きることを否定していたルーシーが自分の夢としてではなくデイビッドの夢として月へ行く。

デイビッドはサイバーパンクではなくてエッジランナーズになったんだよ、、。