物語はかなり進んでいるのに、ネタは途切れずおもしろさは加速し続けている。
豊かな発想力とサスペンス&スリラーを知り尽くした展開力が、信じられない高レベルでバランスをとっていた。
驚異の物語はまったく垂れることなく、ラスボス・ホワイマン打倒に向かっている。用意は周到だ。
シーズン1等で見られたような、ゼロからモノを創り出すSFらしいディテールの細かい部分と、ディテールをノイズと決めつけたようなダイナミックな展開のバランスがとても良い。
たぶん、基礎を創り出すことにはある程度時間をかけて描写しているんだと思う。
ずっと以前のシーズンでやった、最も重要な硝酸を創り出すディテールの細かさとか、今クールだと、ゴムの精製にちょっとだけ時間をかけたりとか。
それなのに、あっという間にタイヤが出来たり、あっいう間にバイクができたり、砦ができていたりとそんなこと。
今クールで最も驚いたのが、モノを創り出す繊細な作業と敵の襲撃をリンクさせたタイムリミットスリラーの作り方。
繊細な作業とはもちろん例のダイヤモンド。
それも、2ヶ所同時に作業が進行中で、そこに押し寄せる機関銃を持ったスタンリーたち。
千空の仲間たちは次々とスタンリーたちの銃弾に倒れていく。
このシーンは気がつくと息が止まっているくらい見事なもの。
暴力のスタンリー側は死力を尽くして攻め、千空側は知力を尽くして防衛する。
物語的には千空側の勝利はわかっているんだけど、スタンリー側が死力を尽くしているのがビンビン伝わってきた。
こういう場合、映画でもドラマでもアニメでも、敵側はバカでいい加減であんまり頭が良くなくて、ちょっとした見落としや怠惰から敗北するように描かれることがほとんどなんだけど、このアニメは全然違った。
暴力のスタンリー側で巨大な知力を担うDr.ゼノは千空たちに捕らわれている。
そんなハンデを背負ったゼノが、暴力スタンリーに知力を尽くした方法で自分たちが有利になるように工作したりする。
もちろんスタンリーにも知力はあって、ゼノの信号を見落とさない。
知力の千空たちはトウモロコシ畑のゼノ帝国に残してきた仲間たちと、相手に気付かれない方法で連携し、そして最も重要な要素「信頼」で結ばれていたからこそ、最後の最後の大逆転を導くことができた。
ちょっとだけ千空陣営の方が、メンバーの平均知力が勝っていたという紙一重。なんてスリリング。
暴力と知力が知で血を洗うような二転三転する展開の中に上手く配分されていて、圧倒されて翻弄された。
そして、物語は一転。スイカのひとり科学王国がやってくる。
ホントに見事過ぎる展開だった。
ラストで、スタンリーについて取引を持ちかけるメンタリストのように、時折大人な展開が出てくるのもこのアニメの特徴で、語り尽くせない物語の魅力のひとつになっている。
2025年から放送中の「Dr.STONE SCIENCE FUTURE」は3クールだそうで、2026年に3クール目の放送がアナウンスされた。
それが、この壮大な物語の最終クールとなるのでしょうか。
完結したら、シーズン1から全話見直したい。
ものすごく良くできたアニメ。
最後にメンタリストが持ちかけた穴について、ネタバレで。
ネタバレ。
最後の最後で、スタンリーの処遇についてゼノに持ちかける。
文明復活後にスタンリーが復活したとき、スタンリーたちの襲撃は正当な行為だったと証言する。だから協力しろ、と。
そこでゼノが納得するわけだけど、甘い甘い。
ゼノは簡単に硝酸を作り出せるんだから、簡単にスタンリーたちを復活させられる。
そうしたところで、ホワイマンを倒さなければ再び石化させられるから千空たちに協力せざるを得なかったとしても、スタンリーを復活させて武力で千空たちを服従させて地球を掌握したあと、自分のやりたいようにロケット製作にかかったって、なんら問題はない。
ホワイマンとの戦いがあるのなら、スタンリーの戦闘能力は得がたいものだから、それを放っておくのはもったいないというのもある。おもしろいキャラだし。
3クールで、スタンリー復活あるかも? ……ないか。
穴といえば穴なような気がするんだけど。