このレビューはネタバレを含みます
原作は『恋は世界征服のあとで』タッグということで、ギャグセンスと意外性が光っていて楽しめた。
"死にたがり鬱病メンヘラ作家"は冒険者に選ばれたら駄目でしょう、というところから始まり、ストーリーのあらゆる分岐点で普通なら選ばない方の道を選択していくアンチ王道シナリオ。
王道の異世界召喚ものを骨組みに、それらを皮肉った意外な転がりを見せてくれる。
主人公の行動原理に善悪などは関係無く、敵にも味方にも、物語るに値する人間らしい苦悩を見出すと、創作意欲が湧く主人公。
敵対者を倒すのも、人や世界を救済するのも、主人公は意図していないというところが斬新で面白い。
それから、ここまで自分で歩かない異世界ものの主人公も希少。
第11話の姉妹の話は泣ける。
特に、姉・ユリコの声優がめっちゃ良い。
ユリコの抱えているもの、堪えていること、周囲や自分への苛立ち、腹の底から沸き立つ憎悪と愛情、それらが声の震えや抑揚といった細かい表現から伝わってくる。
闇堕ち中のダウナー寄りの低い声と、改心後の明るくなった声の使い分けもとても素晴らしい。
脚本をよく読み込んで丁寧に演じているのが伝わって良かった、と思ってクレジットを眺めていたら、小原好美だった。何度も聞いたことのある好きな声なのに、全然その人だと気付けなかった。実力派だ。