ウシュアイア

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEXのウシュアイアのレビュー・感想・評価

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(2002年製作のアニメ)
4.3
人間の脳がネットとつながった”電脳化”、身体の人工物への置換”義体化”(サイボーグ化)の技術が進んだ未来の日本において、軍の特殊部隊出身者によって構成される内務省直属の独立防諜「公安9課」の活動を描いたSF作品。

GYAOの無料配信にて視聴。ゼロ年代の『攻殻機動隊S.A.C』、10年代の『PSYCHO-PASS』と言われ、『PSYCHO-PASS』シリーズにドはまりし、時代を代表する名作と言われながらも、契約しているFODでは観れなかったのでGYAOの無料配信はありがたかった。

『攻殻機動隊S.A.C』『PSYCHO-PASS』どちらも未来の警察・治安組織の話で、技術が進歩した未来における人間の在り方を描いている点でSFの金字塔と言っていい。

未来を描いたSFの良作は、未来を人間がどう生き、社会はどうあるべきか、というテーマを投げかける。『PSYCHO-PASS』は表向きは人間の意志が介在しない社会システムによって監視・管理される未来に対し、『攻殻機動隊S.A.C』は人間の脳のネットワーク化と身体のサイボーグ化によって、他者との記憶や意識の境界が薄れていき、身体性(身体感)を喪失していく未来の話となっている。

この作品が作られたのは約20年前というのがすごい。まだ携帯電話がちょっとネットにつながるようになったばかりの頃で、人間の脳のネットワーク化なんてあまりイメージしづらかった時代だが、今の感覚だと脳とスマホがつながっている感じで、感覚的につかめやすくなっている気がする。一日中ネットを観ていたり、SNSに繋がっていれば、似たような感じになってしまうだろう。

「笑い男事件」という大きな事件とそこから派生した事件があるものの、様々な事件のオムニバス形式で、槙島聖護のような悪のカリスマが牽引していくわけではないが、全体を通して人間や社会の在り方が見えてくる感じになっている。

登場人物は皆「大人」で、考え方や価値観が確立しているため、なるほどな、と納得してしまうところが多い半面、迷いや悩みが少ないため、感情に訴える部分はあまり多くなく、つまらないと言えばつまらない。とはいえ、サイボーグ集団「公安9課」の中で、義体化していないトグサの存在が他のキャラクターとの対比になっている。トグサがもう一人の主人公といってもいいし、常守朱のような立ち位置でトグサが主人公でもよかったのではないかと思う。

OPのロシア出身のオリガさんの”Inner Universe”はめちゃくちゃかっこいいい!オリガさんは数年前に若くして亡くなっており、とても残念。
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