都部

外見至上主義の都部のレビュー・感想・評価

外見至上主義(2022年製作のアニメ)
3.0
韓国は言わずと知れた美容大国であり、本作の外見がもたらす偏ったように見える格差は実はさほど的を外しておらず、就職や進学にさえ容姿端麗さが求められる文化があるのは事実です。
ですから『整形』はお洒落の前提としてあり、容姿が醜ければ整形を薦められることもザラで、進学や誕生日の記念日に親から子へと整形手術を贈与するなんてことも珍しくはないのだとか。

本作──『外見至上主義』では、単純に容姿がイケメンに変化するのではなく二つの自分の身体を使い分けての生活を強いられる主人公の姿が描かれており、直面する美醜での世間での扱いの差異など社会的事情に折に触れながら、何故か混入したヤンキーバトル要素を弄ぶことで話が進展していきます。

容姿の美しいものは高所得でそうでないものは低所得の生活を強いられているという描写も生々しく徹底していて、ヒョンソクがイケメン姿でそんな彼等と交友関係を結んでいくという構図は些かのグロテスクさを感じますが、虐げられていた人間だからこその共感能力を駆使して彼等を見返すべく『イケてない奴等』が努力するというのはシンプルで呑み込みやすい話作りであるように思いました。

それだけに謎のヤンキーバトル要素は逆にその複雑な事情を鑑みた話を悪い意味で単純化している印象で、実は喧嘩のスペックがあるからなんだというのかという域をやはり出ません。虐げる/虐げられるの立場を決定付けるのが暴力だとしても、それはテーマである美醜とは無関係ない点で外見至上主義的な価値観のカウンターとして『暴力』を配置するのはやや乱暴とすら思われます。最終話で用いられる『手段』を考えても、それはやはり物語を不純にさせており、瞬間的なカタルシスとして用いられるもその自覚意識──暴力を行使できる立場になったことで覚える所感など──がヒョンソクになく流されるままである以上は、シーンとシーンの繋ぎ以上の印象を抱くことはないでしょう。

全8話という話数構成ゆえにヒョンソク以外のキャラクターの描写不足などの文句もありますが、最終話の歌唱を皮切りとして容姿の壁を超えるというアプローチは本作の一貫した描写で、決してアニメシリーズとして安易なオチになっていない点は良かったと思います。
都部

都部