用語を解説なく使うが、映像と会話の流れで何となく分かる、ファンタジー全開の作品
好みはかなり別れる。難解ではあるが不可解ではないし、テーマ自体は十分に伝わるように丁寧に作られている
自らのルーツ、居場所を様々な人と関わりながら探し求める旅物語を基軸としつつ
他作品には見られない特殊な設定を使った新鮮味のある人間像の掘り下げ方が楽しめる作品である
作品観の共有が容易い、どこかで見たような設定の王道展開を、美麗な作画でやってくれる作品は山程ある
このまま独自路線を貫いてほしい。この作品にしか出せない味わいが確かにある
ベルはまともな人間の姿をしている。しかしこの世界では誰よりも不気味な姿である
自分のルーツはどこにあるのか、本当の仲間はどこにいるのか
もっとも親しい人である師匠を忘れるという高い代償を払ってでも、知ろうとすることをやめられない
あらゆる生命を尊重する慈愛に満ちた心を持ちながら、巨大な剣を振るって苛烈に敵を討ち倒す
同じく孤独をかかえていた、斬ってしまったものに対して、心底申し訳なさそうに「ごめんね」というベルの姿を見て、この作品は他の人が言うような、独り善がりな作品ではないと思えた
旅人になるために課せられる呪い、親しい者の死を告げる烏、命よりも重い成長する剣…
独自の物語構造を生み出すために、次から次へとファンタジー要素という名の舞台装置が組み込まれ、山場に向けて走っている
馴染みのない光景や共感しづらい行動・心理が描かれるため、熱意を持って好意的に作品を鑑賞する気がない人には一切伝わらない造りになっている
きちんと作品で提示された設定と、それに基づくロジックを用いれば、理解できないことは1つとしてないし、あったとしても伏線と分かるように演出されている
間違いなく今期一番の見応えがある作品である