tabi

葬送のフリーレンのtabiのレビュー・感想・評価

葬送のフリーレン(2023年製作のアニメ)
4.9
17話まで。(めっちゃ長々思いついたものを書いてます。全話視聴後追記)
かつての仲間とゆかりのある人間たちとの旅を通して、エルフのフリーレンにとってのその10年の意味を知り、現在と呼応し合う物語。

人は記憶に支えられ生きている。人を人たらしめる重要なものの1つが記憶だと思う。同時に人は忘れることが出来るから生きることが出来る。それが忘れたくない大切な思い出だとしても、人は記憶を蓄積し、忘れたり、無意識に変えたりして生きている。記憶は変化する。今を生きる自分の感情によって、過去の景色が全く違った意味で見えることがある。
無形で不確かな記憶に人は惑わされ、支えられて生きている。

記憶の中に生きる人々。
フリーレンの記憶にあるヒンメルがいちいち美しくて、ほんの数十秒でも沁沁と涙が出る。小出しのエピソードが積み重なって、笑い話も泣き笑い。だからどんな小さな事も残さず憶えておきたい、宝石箱のような物語。
フェルン達と関わることで、過去の思い出がより輝いてることにフリーレンも気付く。
ユーミンの何もなかったようにみたいにその美しさを知るのは過ぎ去った後なのかもしれないが、ヒンメルはフリーレンを通してその事に気づいていたのかもしれない。

プラス、魔族の話や魔法の扱われ方とかファンタジーとしての好奇心も満たされる。

試験編はまとめて観ようと1クール目を4、5周は最終話前にしてたと思う。


追記/
全体的に不思議なところでガクつくからシーンによって力の入れ方の差なんだろうけど、ちょっと残念。バトルシーンがカッコいい。
良くも悪くも嫌いなキャラクターがいなくて、単純にみんなそれぞれ信念や生きてきた環境が違うんだろうなって受け入れやすくなってて、特にゼーリエは一番のお気に入り。

人間とエルフを共に描くことで死生観が違う角度で語られるのは面白かった。私が飼い猫に対して感じる命の短さとも違うだろうし。LotRとかハマんなかったからエルフに興味もなく、不老不死についても手塚治虫の火の鳥みたいな人間目線でしか考えたことなかったから興味深い。永遠のような時間を生きる事が前提として生まれてきた者達から見える人間の姿が新鮮だった。

過去と現在を幾重にも重ねることでリフレインが永遠に続くような感動があるが、このスタイルはいくらでも好きなタイミングで『記憶』を創り上げられるから、漫画を書くにはとてもやりやすいだろうなあと思う。全てがフリーレンの過去に帰結するからある意味お決まりなんだけど、観者もそれを求めているから気持ちよくなっちゃう。
同じように沢山の素晴らしい台詞に何度も涙を流したが、そのどれもがある程度の年齢になった者なら何処かで見聞きし、実感してることばかり。普遍的な言葉だらけ。ただ、そのどれもが、きっと誰かに背中をポンポンされながら言って欲しい言葉なのかもしれない。ヒンメルや旅の仲間達に、この作品の包容力に、自分自身への励ましのような言葉に、みんなが共感し感動出来る。



平和の時代の魔法使い
フリーレンが好きな理由がこれに詰まってる。
何度も言及される魔法はイメージってことと、花畑の魔法。
テクノロジーが進化して何もかもが可視化できたと錯覚し、想像力の欠けた怠惰な世界へと加速する今は平和の時代に程遠いし、平和を真っ直ぐにイメージするには過酷だと思う。
もっと自由に、軽やかにイメージの世界を広げたくなる豊かな物語だった。

24.12月現在約10回目の最終話視聴。史上最速最多で繰り返し観てるアニメ‥っていうか映像作品かも。気分が落ち込んでると映画とか観られなくなっちゃうんだけど、フリーレンってどんなテンションの時でも観られるから重宝する。しかし涙の量は増すし、前回泣かなかった場面でも涙がこみ上げてくるようになる。
tabi

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