ハヤシ

葬送のフリーレンのハヤシのネタバレレビュー・内容・結末

葬送のフリーレン(2023年製作のアニメ)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

2日間で28話まで一気見した。話題になっただけあり傑作。大人向け。

『指輪物語』のような人間がエルフやドワーフと共存する世界に『ドラゴンクエスト3』を下地としたジョブ型の職能、RPG全般に見られるクエスト、パーティー、ギルド、魔王などの基本概念を丸ごと転用することで、大半のリソースを独自の世界観の構築に用いている。(魔族および魔法の概念には本作のオリジナリティが強い)
たぶんこれらは「異世界転生系」とされるジャンルと共通する約10年弱のトレンドだろう。

※類似する手法は、全く違うジャンルだが近年の「タイムリープもの」の映画でも用いられていて、自分たちの状態を古典作品を複数並べ形容することで世界観説明の大幅な省略に用いる。(メタフィクションなので主人公が「まるで『恋はデジャ・ブ』みたいだな」とか平気で言う。)

題材と世界観が群を抜いて素晴らしい。舞台はいわば「全クリ」後の世界で、主人公はレベル99。バトルよりも対人のコミュニケーションや対話の主題が圧倒的に面白い。今を生きているけど、過去のことを回想する比率が増えていくのは歳を取ってみて共感できる。人生を一定の長さまで生きて経験を積んだ人や、子どもを持って今まさに幼少期を追体験している人にとって共感できる箇所が多いと思う。逆に10代でこれの面白さが伝わるのか?という疑問もある。

記憶と記録、忘却が主題。
フリーレンは長寿ゆえ、いま生きている人間だけでなく、①偉人(善行や偉業で構成される)、②伝説(偉業ゆえ記録が残るが古すぎて実在すら怪しい)とも交流の経験を持ち、人間たちが美化した若き勇者一行(精強だがサークルのノリの明るさ)や存在そのものを疑われるような大魔法使いとの交流の記憶を持つ。だが、その記憶を現代に生きる人間に説くことも強いることもない。それでいいと思っている。なおエルフのクラフトやドワーフのフォル爺のように、過去には偉人だったが存命ながら偉業や存在を忘却された人物も複数現れる
(なおフリーレンも人間の世代や知識により認知のされ方にばらつきがあり、広義では忘却された英雄に近い部分がある)

ロードムービー的でもあり、土地の景色が変わり四季が移ろい、物語内でも時間がガンガン流れる点のリアリティが好き。1クール目は自然と泣いてしまうような場面が複数あった。

ただし、後半がいかにも少年誌らしいバトルものになり、特に2クール目後半は『HUNTER×HUNTER』のハンター試験(の平和バージョン)を連想とさせた。また魔法に関して全知全能であるエルフのような上位概念については他作品で頻出するギミックや世界観のような既視感があり、本作の面白さや固有性から逸脱していった感がある。とはいえこれも少年誌のファンタジーものとしては避けては通れない描写か。
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