このレビューはネタバレを含みます
一昔前に原作のCMで見かけていた、ロシア語でボソッとデレるらしいヒロインが気になり視聴しました。原作は未読ですので、その点ご了承ください。
作品レビューとして「よかった点」「気になった点」、ネタバレ多めの「雑多な感想」の三本立てでお送りします。
よかった点。
ヒロインがかわいい!以上!
…すみませんでした。アニメーションは絵が全体的にとても綺麗で、尚且つ山場のシーンはさらに一段階上げてくるという、さすが動画工房さんといったところでした。同時期に他の大きいタイトルの制作も手がけていたのにも関わらず、そんなことは感じさせないクオリティでした。
気になった点。
ラブコメとシリアスのバランスです。詳しくは後述します。
以降雑多な感想。
本作の序盤はアーリャとのラブコメをメインに展開されますが、中盤からは生徒会挨拶へ向けたバトルがメインの展開へと移ります。その中盤から私はお話に全然乗れずにいました。各キャラクターが目指すという生徒会長というポジション、生徒会という組織の価値が分からなかったからです。この原因としては、本作が設定の開示を積極的に描いていないことが一つ要因として挙げられます。視聴を進めた結果私がした解釈としては「政近らが通う高校は様々な富裕層や七光りが集うようないわゆるエリート校であり、その中での生徒会長というポジションは通常の高校と異なり自身の名誉や実績により直結するため、価値が高い」というものです。この解釈も生徒会挨拶編が始まってしばらくしてからようやくたどり着いたものでした。この点に関してはより早い段階から描写を重ねてほしいと感じました。
第8話のコメントを見返すと過去の私はこのような設定描写の欠落の意図について何点か可能性を考えていました。最終話まで見た今、正解はその中にあった「設定描写を削ってでも描きたいものが最終話(付近)にあった」であると確信しました。さて、本作が抱えていた重大な問題として、アーリャの“中身”が薄いことが挙げられます。最高にかわいいアーリャさんではありますが、生徒会長へ向けるモチベーションは不明確で、第11話ではアーリャ自身もそれに言及しています。最終話まで見た結果、本作は「そんなアーリャがこれから頑張っていく様を応援するという物語の、“はじまり”」を描いたものだと解釈しています。最終話にしてようやく本編が始まったのです。この始まりに至るために様々を削ってきたのだと考えれば納得できる点も多いです。
コメディから生徒会挨拶編というシリアスにシフトして以降アーリャとのラブコメパートが減り、その分を他ヒロインが担っていました。その中でも一番多くを担っていたのは有希でしょう。本作の序盤で「これはラブコメ作品だ」という視点で固定してしまうと、どうしてもフォーカスがアーリャから有希へ段々とシフトしてしまいがちではないでしょうか。私自身もちょっとそんな感じでした。すると“ラブコメ”としてはアーリャの魅力が段々と乏しくなっていくようにも見えてしまえ、失速感を覚える原因にもなるのではないかと考えています。この物語がどこを目指すものであるか。これを常に考えながら観ないといけないという点で本作はやや難易度の高いものであると感じます。
第2期制作決定おめでとうございます。まだまだ投げっぱなしの伏線がたくさんあるので、こちらの回収も期待したいところです。本作は総じてアニメーションが綺麗でした。この点では誰もが気楽に観られる作品だと思います。さて、本作を最後まで視聴し、皆様はアーリャを応援したくなりましたでしょうか。私は、真っ直ぐな彼女の往く未来を観てみたくなりました。私のような感情を持った視聴者が他にもいらっしゃるのならば、本作はきっと成功しているのだと思います。